はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた行動制限により、世界経済は戦後最悪の景気後退に向かっています。
世界に先駆けて感染拡大と都市閉鎖を経験した中国では、1〜3月期の実質GDP成長率が前期比▲9.8%、年率では▲30%を大きく超える減少となりました。米国や欧州、そして日本でも4〜6月期の実質GDP成長率は前期比年率で▲30%程度の落ち込みとなる可能性があります。
これに対して各国政府は相次いで財政政策を打ち出しています。日本でも、4月7日に事業規模108兆円の経済対策が閣議決定されました。
しかし、4月中旬にかけて実施されたロイターによる企業を対象としたアンケート調査では、経済対策が「やや不足している」との回答が46%、「かなり不足している」との回答が29%となっています。また、諸外国と比べて規模が十分でないとの批判も出ています。
IMFが各国の財政政策を比較
では、諸外国と比較して日本の経済対策の規模はどうなのでしょうか。IMFはリサーチペーパーで4月8日時点での財政政策の各国比較を試みています。経済対策全体の対GDP比が最も大きいのはドイツとイタリアで、ともに34%に上ります。
しかし、両国とも大部分が貸し付けや納税延期となっており、歳出の拡大を伴う財政政策の対GDP比はドイツで4.2%、イタリアでは1.2%にとどまります。一方、オーストラリアでは経済対策全体の対GDP比は12.5%にとどまるものの、歳出の拡大を伴う財政政策の対GDP比は10.6%とトップとなっています。
日本は経済対策全体の対GDP比は20.4%とドイツ、イタリアに次ぐ3位、歳出の拡大を伴う財政政策の対GDP比は10%とオーストラリアに次ぐ2位と、ともに世界でトップクラスに位置します。
ただし、このIMFのリサーチにおいて日本の経済対策の規模は過大推計されている印象を受けます。108兆円には納税や社会保険料の支払い期間猶予が約26兆円含まれており、過去の経済対策と比べてもかなり総額が水増しされている印象です。
財政支出は39.5兆円ですが、これには財政投融資のほか、秋の台風被害を受けて昨年12月に成立した補正予算の未使用分9.8兆円も含まれています。
いわゆる「真水」となる国、地方の歳出は27兆円となっていますが、これを財政支出と同様の比率で案分して既存予算の未使用分を除くと、今回の補正予算による真水は20.3兆円と試算されます。
対GDP比では3.6%で、IMFの計算する10%(計算根拠は不明)とは大きな開きがあります。しかし、過大評価されているものの大規模であることには変わりなく、結論として日本の経済対策はIMFのリサーチにあるような世界トップクラスでこそないものの、「諸外国の平均よりやや大きい規模」と判断しています。
<写真:代表撮影/ロイター/アフロ>