はじめに

円高ドル安基調とならないのはなぜか

また、リーマンショックの反省を踏まえ、各国の中央銀行が信用不安の回避に尽力していることも市場の安心感につながっています。

米連邦準備制度理事会(FRB)が社債を買い入れるなど前代未聞のことですが、金融危機や信用危機が起こったときのコストがいかに大きいかを前回経験しているだけに、導入にためらいはなかったと思われます。

現状、ドル円相場がリーマンショック時のように円高ドル安基調になっていないのは、このように未曾有の財政・金融政策によって金融市場のリスクセンチメント(市場心理)が安定していることが挙げられそうです。

例えば、セントルイス連銀が公表し、市場の緊張感や不安度を示す金融ストレス指数は一時跳ね上がったものの、瞬時に平常レベルに回帰しています。

金融ストレス指数

市場の先行きは

では、今後とも市場の不安心理が台頭することはないのでしょうか。確かに先行きは不透明と言わざるを得ません。現状、世界経済のV字回復シナリオを信じる市場関係者はかなり少ない印象です。コロナ禍の収束時期が見通せないだけに当然と言えば当然でしょう。

一方、世界的な規模で新型コロナウイルス感染者が再拡大していますが、今後、感染者数に対する市場の反応は徐々に薄らいでいくのではないでしょうか。流行した当初は、誰もが未知なるものに対して恐怖心を抱きましたが、疫学研究が進んだことで多くのことが分かってきたようです。

また、新型コロナウイルスを変革のドライバーとし、新しい時代に進むという前向きな意識が芽生えているのは確かでしょう。絶望しかなかったリーマンショック時とは大きな違いです。