はじめに
投資や金融も。31の資格を持つ中で感じる不動産投資の良さ
――ちなみに、猪俣さんは30以上の資格を持っていると伺いましたが、どんな資格なのですか?
不動産や建築、賃貸管理の資格はもちろんですが、投資や金融、保険の分野も持っています。何事も掘り下げたくなる性格なので、不動産投資をやる中で建築や投資、いろいろな分野を勉強したくなりました。それで資格が31種類にまで増えていったのです。
――その中でいろいろな投資や金融全般の知識も身につけたと思いますが、猪俣さんが考える不動産投資の良さとはなんですか。
事業に近いということですかね。経営者に似ているというか。有名な本「金持ち父さん貧乏父さん」の中に、すべての職業を4つに分ける話がありますよね。「E:従業員」「S:自営業者・専門家」「B:ビジネスオーナー」「I:投資家」という。不動産投資は、IとBの中間あたりではないかと思うんです。
――ビジネスオーナーと投資家の中間だと。
はい。他の投資に比べて、自分が関われる、自分の工夫で成果を上げられる要素が多いんです。たとえば先ほど話した着工前の物件も、すでに8室になるのは決まっていて、間取りも計画されていました。しかし、その計画では一部屋あたりの広さが周辺の競合物件より狭く、入居者募集に苦戦することが予想されたのです。そこでミリ単位で間取りを再検討し、バストイレ別にしたり、収納スペースを捻出したり、あるいはエントランス周りのバリューアップをしたりしました。
――そういった自分の工夫ができるわけですね。
そうですね。リフォームやリノベで物件のバリューアップをして賃料を上げる、運営方法を改善して稼働率を高める、募集方法を工夫して空室を解消する、融資を見直して返済負担を下げる。自分自身の経営努力で利益率を高められる可能性はいくらでもあります。こういった部分の余地が大きく、それを自分の判断でできるのは不動産投資の良さではないでしょうか。
――確かに、不動産投資ならではの良さかもしれません。
ただ、この辺りの采配や投資判断にもそれなりの知識が必要です。不動産投資を本格的にやられている方の中でも、それを系統だてて学んでいる方は意外と少ない。独自に手探りでやっているケースの方が多いかもしれません。
――そうなんですね。
加えて、不動産投資は結果が出るまでの期間が長い投資です。物件を複数所有し、10年以上経ってやっと本当の成果が明らかになってきます。最初のうちの結果(たとえばキャシュフロー)が良くても、保有期間中のメンテ関連の出費や売却出口での損益など投資期間全体のパフォーマンスを見ない事には、実際に成功していたのかどうかということがわかりません。「不動産投資で成功している」という方の中には、取組みして数年の成果をもってして成功と定義づけるケースも少なくなく、そのやり方をそのまま鵜呑みにしてしまうと、希望していたような成果とはかけ離れたものになってしまう恐れもあります。
だからこそ、その人がどれだけ長く不動産投資をしているのか、あるいは入口から出口まで一通りの経験を踏んでいるかという点も、ひとつの注目すべきポイントということになると思います。そうして信頼できる人から基本を学ぶのが大切だということを付け加えておきます。