はじめに
米中関係が再び深刻化するなか、米国で注目すべき動きがありました。2020年5月に半導体の受託製造会社で世界トップの台湾企業TSMCが米国アリゾナ州に工場を設立すると発表、翌6月には米国半導体産業強化を目的とする超党派による2つの法案が上院に提出されたのです。
米中陣営で半導体産業がブロック化へ
2法案は、米国を拠点として製造面から半導体産業を強化していこうという趣旨で、製品開発から工場設立にいたる多く分野で、政府系研究機関やメーカーを支援する、という内容です。これらの動きは一過性のものではなく、半導体業界が今後、米中それぞれの陣営にブロック化していく動きを示しているのかもしれません。
このように見ていくと、TSMCの米国進出と法案提出はばらばらの動きでなく、密接なつながりがあるとも考えられます。なぜなら、米国の半導体メーカーの多くは“ファブレス”という製造機能を持たない姿が主流となりつつあり、既に多くの企業がTSMCに製造を委託しているからです。
米国で半導体産業を強化する場合、ボトルネックになるのがサプライチェーンになるとみられます。米国半導体メーカーの多くが海外に工場を移転していることに加え、ファブレスが多くを占めているからです。また、半導体産業では製造装置から装置を構成する部材・加工メーカーまで広範なサプライチェーンの構築が求められますが、この点も同様に脆弱だと考えられるでしょう。
高い競争力を持つ日本メーカーに勝機
一方、日本では製造装置メーカーを頂点とする強固なサプライチェーンが築かれています。半導体メーカーの多くは撤退、縮小してしまいましたが、製造装置、材料の分野では長い歴史の中で積み上げてきた技術力を背景に、依然世界で高い競争力を維持しているからです。
このサプライチェーンに属する製造装置部材・加工メーカーの中には、これまで独自に米国拠点の強化、あるいは米国企業との関係構築に力を入れてきた企業もあり、現地で築いた顧客との関係を活かし、ビジネスチャンスを得る企業も現れてくる可能性があります。