はじめに

株高はアベノミクスの成果ではない

冒頭で「アベノミクスの終焉」が否定的に受け取られたと述べましたが、アベノミクスで株があがったのは1年目だけです。そしてそれはアベノミクスのおかげ、というよりグローバル景気の回復に助けられた面が大きいと思われます。

グローバル景気が底打ち反転し、第二次安倍政権が誕生した2012年12月には日本の景気も底を打ちそこから景気回復が始まっていました。東日本大震災~民主党政権末期の停滞感のあとに訪れた景気回復であったため、世の中の雰囲気も相場も一気に祝祭的なムードに包まれました。それがアベノミクス1年目のインパクトを大きなものにした背景だったのです。

日銀の異次元緩和が相場の上昇要因になったことは否定できません。しかし、明確な株価の押し上げ要因になったのは「黒田バズーカ2(2014年10月に実施された日銀による量的緩和)」あたりまでではないでしょうか。その後も金融緩和はずっと続いていますが8年弱の安倍政権時代で株価は乱高下を繰り返し近年はずっと同じようなレンジにとどまっています。

金融緩和は株価上昇の要因ではあるものの、常に相場を押し上げたり安定化に寄与するものではないということです。さらに言えば、金融緩和はいまや世界的に行われていて日銀の専売特許ではありません。FRBが一段と踏み込んだ緩和策をとっている以上、日銀独自の政策変更余地も限られそうです。

こうみてくるとアベノミクスが終わるといっても、アベノミクスによって支えられて今の相場があるわけではないので、それほど悲観的になることはないのです。

構造改革こそ株高への道

アベノミクス「3本の矢」に話を戻すと、金融政策や財政政策は景気対策です。金融を緩和したり財政を出動させたりして景気を刺激するものです。それは短期的な景気循環を加速させたり落ち込みを軽減したりするには役立つでしょう。

しかし日本経済の潜在的な成長率を高めることにはつながりません。それは成長戦略の役目です。成長戦略とは構造改革です。短期的な景気対策ではなく、日本経済の基礎体力を底上げするような改革です。既得権益にしがみつくひとたちを排除し、岩盤規制を打破するなど規制緩和を進め、産業の新陳代謝を促す。日本経済の活力を高める改革が期待されていました。そんな大仕事は多大な労力と時間を要するため長期政権でなければ成し得ないことです。

安倍政権は憲政史上最長の政権になりました。本来であればもっと構造改革を進められたはずでした。単に「アベノミクスの終焉」を嘆くより、重要な課題が未完のままアベノミクスが終わることを嘆くべきです。

いや、過去を嘆くより次の政権に期待しましょう。アベノミクスの負のレガシーを引き継ぐ次の政権が構造改革を進められるなら、日本経済の活力が高まり、その時こそ持続的な株高の時代が到来するでしょう。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>
<写真:ロイター/アフロ>