はじめに

彼が仕事を紹介すると言い出して

ミヤさんは新しい派遣会社に登録しましたが、仕事自体が見つかりません。すると彼が、「こんな仕事がある」と勧めてくれたのが、家でできる事務的な仕事でした。

「それが初期費用として3万円かかるというんですよ。アヤシい手口ですよね。私、そのころにはすっかり彼のことを疑惑の目で見ていました。もともと、断れない関係にあって、しかも立場の弱い私から、お金を引っ張るつもりだったのではないか、と。たいしてお金もないから彼にとっては、最初からそうするつもりというよりは、少しでも自分の出費を減らしたかっただけかもしれませんが」

3万円は払えないと彼女は突っぱねました。仕事は自分で見つけるから、と。すると彼は彼女をぎゅっと抱きしめて、「結婚しよう」と言ったのです。

「話が飛躍しすぎてついていけませんでした。一緒に住むようになってから、あまり性的な関係はなかったんです。なんだか大家と雇われ家政婦みたいな関係になっていたので、どちらからも誘わなくなっていました。でも彼、仕事のあっせんで失敗して、私に逃げられたくなかったんでしょうね、だから今度は結婚を口にした。そういうことだと思います」

彼にとって、彼女は住宅ローンを半分、負担してくれる存在だし、それ以上の負担なしに食費も雑費もまかなってくれる人です。こんな都合のいい“ルームメイト”を手放す理由はありません。

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