はじめに

ロールモデルではなく、見習うべき先輩を見つける

「私の会社にはロールモデルがいない」という悩みをよく耳にします。ロールモデルとは、将来こうなりたいと目標にする存在、お手本としたい人物です。

そんな存在が身近にいれば、自分の進むべき方向が明確になり、悩んだときの指針となってくれます。しかし、もしそんな人が身近にいない場合はどうしたらいいでしょうか。ロールモデルとは、どうしても必要なものでしょうか。

私がかつてマネージャー職を意識し始めたころ、社内で唯一の女性シニアマネージャーであった方をひそかにロールモデルと心に決めていました。しばらくして念願のマネージャーに昇進した私は、彼女の毅然とした強いふるまい方を、そっくりそのまま真似していました。

しかし、その結果は大失敗。メンバーからの信頼を得られず、チーム内に不協和音が響
き出したうえに、心身の病に陥るメンバーが続出。もちろん業績も不振でした。そうして私は、一年たたずしてマネージャーを解任、降格させられてしまいました。

人はそれぞれ個性も違えば、ビジネスの環境も異なります。いくら憧れの先輩のスタイルを真似したとしても、そのままうまくいくはずはありません。しかし、ロールモデルと思い定めると、無意識にその人のふるまいをなぞってしまいがちです。その人がたどったキャリアの通りにならないと焦る人もいるでしょう。

しかし、あなたとその人は別の人間です。まったく同じようにいくわけないのです。それがわかったいまは、ロールモデルなんて必要ない、とはっきり言えます。ロールモデルを探すかわりに、尊敬できる先輩を見つけましょう。存在すべてを真似して追いかけなくても、この人のいいところ、あの人のいいところ、と「いいとこ取り」をすればいいのです。

きっとあなたのまわりにも、「あの人のあんなところを見習いたい」と思える人がいるはず。性別も年齢も役職も問わず、同期や社外や年下の仕事相手にだって、そう思って探せば、学べるところはたくさんあるはずです。憧れのロールモデルなんて、百害あって一利なし。いいとこ取りでいきましょう。

見習うべき人には自分からメンターをお願いする

ロールモデルは不要ですが、メンターは、働くうえでぜひとも必要な存在だと思ってい
ます。

ロールモデルが憧れの存在なら、メンターはよき指導者。あなたのキャリアに有益なアドバイスをもたらしてくれる存在です。仕事の仕方やキャリアプランの悩み、ときには転職についても相談に乗ってもらうこともあるかもしれません。

メンター制度が整っている会社もありますが、そうでなくても、「この人のこんなところがすてきだな」と思うような人を見つけたら、ぜひその人に「私のメンターになってください」と直接お願いしてみましょう。

あなたの部署以外や社外にも目を向けてみると、きっといい人が見つかるはずです。「メンターになってください」と頼まれていやな気持ちになる人はいません。もしその人が多忙で時間がなかったり、職種的にもっとふさわしい人がいると思えば、ほかの人を紹介してくれるでしょう。

かつて私は、会社の制度で大先輩にメンターになっていただきましたが、上の方すぎて遠慮もあり、その方もお忙しかったので、ほとんど何のご相談もしないまま時間がたっていました。

そんなとき、ある一人の後輩から「順子さん、私のメンターになっていただけませんか?」と声をかけられたのです。とても嬉しく思うと同時に、自分からメンターをお願いしてもいいんだ、ということに気づかされ、それ以来私も、この人はと思う方にお会いしたら、直接声をかけてお願いしています。

新しいチャレンジをすることになって、いままでとは違うメンターがほしいと思ったときには上司に相談して、適切なメンターを紹介してもらったりもします。メンターは先輩に限らず、同僚でも後輩でも、男性でも女性でも、社内でも社外でもかまいません。一人にしぼる必要もありません。

この人から学びたいと思え、心から尊敬できる人が見つかったら、ぜひ直接その思いを伝えてみてください。

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