はじめに
バランスシートで現状を把握
老後への備えも大切ですが、備えにお金を回す前に今の資産状況が健康である必要があります。お金の健康状態をチェックするツールが「家計のバランスシート」です。ご相談者のバランスシートを見てみましょう。
バランスシートでは、資産と負債の差が本当の意味での「純資産」で表されます。ご相談者の場合は、資産合計720万円から負債合計300万円を差し引いた420万円が「純資産」です。
資産に入れる数値はあくまで現在価値となるため、運用資産であれば現在の評価額、貯蓄性保険であれば現在の解約返戻金額がバランスシートに入ることに注意が必要です。
もし720万円の内訳に、貯蓄性保険などで将来もらえる予定の金額を入れた金額が入っている場合、解約返戻金はそれより少ないと思われますので、資産合計金額はもっと少ないでしょう。純資産も下がります。また、検討されている外貨建て年金にもし加入されたとしても、しばらくは解約返戻金が払込保険料よりも低いため、資産は減ってしまいます。
この結果から見えることは、少々負債の割合が高いということ。保険加入の前にすべきことがありそうです。
まずは奨学金の返還を
負債の割合を減らすために、まずは奨学金について少しでも繰上返還をし、早めに負債をゼロにすることを目指しましょう。
現預金の280万円から、万が一のための生活予備資金(生活費10カ月分)を残したお金を返還にあてると良いですが、もし投資されている資産のうち売却できるものがあれば、一部返還にまわせますね。
たとえば、預貯金から80万円、投資の一部を売却して120万円分返還すると、残りは100万円。これから月2万5,000円を奨学金返還のために積立貯金すると、年30万円を返還でき、およそ3年超で全額返還が可能です。
外貨建て年金保険のデメリットもきちんと理解しよう
年金の免除期間が長かったことが不安とありますが、年金額が減ることを危惧されていると推測します。まずは「ねんきんネット」を使って、実際にどのくらいの年金がもらえるか試算してください。そして65歳時点でいくらのお金があれば安心なのか考えましょう。その安心に思える金額を、いくつかの手段に分けて備えることをおススメします。
将来に備える手段の一つが、外貨建て年金保険です。年2万ドル受け取るプランを検討されているとのことで、老後資金の不足分すべてを、この保険で賄おうとされているのではないでしょうか。
外貨建て年金保険のメリットとして、円よりも予定利率が高いこと、老後に受取る金額が確定されていることがあげられます。しかし一方で、保険料を払い込んでいる間はしばらく元本割れしていることや、確定している金額は「ドル」など外貨なので、年金受取時に円高になると、予定よりも受け取る円は少なくなってしまう、といったデメリットもあります。その他、払込保険料も為替の影響を受け、増減をするため、家計管理がしづらいという点もデメリットです。
老後に向けた資産形成はいくつかの手段に分けて
これらのデメリットを十分に理解しており、メリットに魅力を感じるのであれば、老後資金を作る手段の一つとして、一部取り入れるのは良いですが、すべてを外貨建て年金保険で準備するのは得策ではありません。
前述したように、保険に加入すると、しばらくの間元本割れするため、バランスシート上の「資産」は減ってしまいます。そこで保険以外の手段として、iDeCoやつみたてNISA、預貯金を組み合わせることをおすすめします。特に、掛金を払っている期間中、個人年金保険料控除よりも税金が多く戻るiDeCoはぜひ活用を。もし毎月1万2,000円掛金を払った場合、年間2万8,800円(※所得税率10%の場合)節税できます。19年間では54万7,200円にもなるため、できるだけ早く始めるのが良いですね。