はじめに
現地、現物を4回見る
――よさそうな物件を見つけたら何をすれば良いですか。
絶対に外せないと思うのは、現地に行って実際に現物を見ることだと思います。
物件を買う人の中には、図面、写真、収益シミュレーションなどのデータだけを見て買う人がいますが、賃貸需要を正しく把握し、適切な投資判断をするためには現地を見ることが大事です。
――現地、現物を見ずに買う人がいることに驚きです。
きっと株を買うような投資の感覚なのだと思います。
地方の物件の場合は「遠いので見にいけない」「見に行く時間がない」といった理由があるのかもしれませんが、近場でも見に行かない人がいます。
不動産屋がデータなどを一式揃えて、「任せてください」「現地に行かなくても大丈夫です」などと営業しているケースもあります。地縁がある場所ならともかく、不動産会社の情報だけで買うと失敗するリスクは高くなりますよね。
逆に、現地に行って賃貸需要などをきちんと把握できれば、空き家リスクなども抑えられるでしょう。あと、実際に街を歩いてみると、今まで気が付かなかった新しい発見があるかもしれません。
――どれくらい足を運ぶのが良いですか。
僕の場合は、少し極端かもしれませんが、最低でも4回は見るようにします。見るタイミングとしては、平日の昼と夜、休日の昼と夜です。例えば、山手線沿線でもオフィスが多い駅などは休日は人が少ないです。昼は賑わっているのに、夜になると急に人が少なくなる街もあります。そういう時に物件を見に行くと、ここは需要がないと誤解してしまうでしょう。それを避けるために、時間帯を変えて4回くらいは見たほうがいいと思います。
家電量販店で冷蔵庫を買う時ですら、実物を何回か見ますよね。車も実物を見るでしょうし、試乗もします。その点から考えても、冷蔵庫の何十倍もする物件を一度も見ずに買うのは勇気がいります(笑)。
購入より管理に目を向けよう
――不動産投資を始める人が見落としがちなポイントは何ですか?
不動産投資を、物件購入の前と後で区切ってみると、多くの人は前段階のことに注目します。物件選び、融資、金利、家賃設定なども、全て前段階に含まれます。
しかし、実際には購入してからが大事です。なぜなら、実際に物件が収益を生むのは購入後のことですし、物件は経年劣化していくため、資産としての価値をできるだけ維持することが大事だからです。
また、建物全体の管理も重要です。区分マンションの場合は自分の物件の資産価値や家賃のことを気にする人が多いのですが、専有部分が魅力的でも、建物のエントランスにゴミやチラシが散らかっていたら、借り手はおそらく内見してくれません。専有部分だけでなく、共用部分の価値にも目を向ける必要があるのです。そのための方法として、僕は自分が所有する建物の管理組合の活動に参加しています。
――空室や家賃滞納などのリスクはどう考えれば良いのでしょうか。
賃貸需要がある場所に物件を買えば、空室リスクについてはそれほど真剣に考えなくて良いと思っています。例えば、僕は東京23区内に所有物件がありますので、基本的には空室は出ません。もし23区内で空室が続いているのであれば、それは設定家賃が市場と乖離しているか、仲介業者さんとの連携がうまくいっていないことが原因である可能性があります。
入居者のリスクについては、物件の質と関係します。賃料が安いアパートなどはどうしてもリスクが高くなるでしょう。知人の投資家の話を聞いていると、夜逃げどころか、昼に堂々と逃げた人がいたそうですし、残置物が多い、設備を壊す、滞納が続く、いつ行ってもいないといった話も耳にします。
そういったリスクが心配であればサブリースという方法が検討できるでしょう。僕も23戸ある物件はほぼ全てサブリースにしています。一般的には、サブリースは家賃の85%ほどになってしまいますが、通常よりも良い条件を引き出しているのでキャッシュフロー上もプラスになっています。