はじめに
日米金利差とドル円の値動きは頻繁に乖離
二つ目のパラメーターとして挙げたいのは金利や金融政策です。「お金は金利の低いほうから高いほうへ流れる」と言われるように、金利の高い通貨が選好されやすいのは確かでしょう。その意味では、今後、長期にわたり実質ゼロ金利政策が続くとみられるドルには下落圧力がかかりやすいと言えるかもしれません。
為替レートは金利によって左右されるという考え方は一見するともっともですが、現実は必ずしもそうなっていません。下図は日米長期金利差とドル円を重ねたグラフです。もちろん、両者が連動している時期もありますが、全く逆の動きになっているケースも珍しくありません。金利だけで為替レートの変動を説明するのは無理がありそうです。
各種資料より大和証券作成
3つ目のパラメーターは
そこで、三つ目のパラメーターとして挙げたいのが物価です。いくら金利が高くても、物価の高い通貨は貨幣価値が減価し、下落しやすくなります。例えば、新興国通貨は相対的に金利の高い国が多いのですが、インフレ率も高いケースが多く、必ずしも金利の高さが通貨の強さに結び付いていないのが現実です。
ドル円相場に話を戻すと、日本と米国では概ね米国のほうが物価上昇率の高い状況が続いてきました。それゆえ、ドルのほうが円よりも貨幣価値が目減りし、円高ドル安圧力がかかりやすい傾向にありました。特に日本がデフレの時代はそれが顕著だったと言えます。
現在はコロナ禍で、米国も物価が上昇しにくくなっており、両国の物価格差はそれほど大きなものではありませんが、今後は注意が必要です。と言うのも、日本では携帯電話料金引き下げの機運が高まっており、物価下落圧力が高まりかねないからです。
なお、米国の物価が上昇した場合、利上げのタイミングが早まるとの思惑から、ドルが買われるケースも短期的にはあり得るのですが、中長期的に見た場合はドル安材料であると判断されます。