はじめに

新型コロナウイルスによる急落からのV字回復

2020年初頭のNYダウは2019年の勢いそのままに史上最高値を更新し続け、1月に初の2万9,000ドルを突破し、3万0,000ドルに到達するかに注目が集まっていました。

しかし中国武漢を震源地とする新型コロナウイルスの世界的流行が見られると2月の下旬から事態は急変。NYダウは1日で一時3,000ドル超の下げ幅を記録する日もあるなど混乱の相場となり、わずか1ヶ月の間に1万ドル以上の急落となりました。

各国で緊急の金融政策が行われる中、アメリカのFRBは3月4日に0.50%、14日に1.00%の2度の緊急利下げを行い、マイナス金利政策を再開しました。さらに大規模な債券購入プログラムなど迅速な金融緩和を行ったことで株式市場は急回復、NYダウは9月に一時2万9,000ドル台を回復しました。

コロナ禍でも高い成長力を維持するGAFA銘柄が相場をけん引するナスダックは、史上最高値を大きく更新し一時1万2,000ポイントまで上昇しています。

急速に株価が回復する場面では、新興株式取引アプリのロビンフッドを使って投資を始めたミレニアム世代の投資家、“ロビンフッダー”も注目を集め、株式市場は幅広い層で盛り上がりを見せました。

経済の回復は道半ばで失業者数も依然高止まり、今冬には新型コロナウイルスの第2波到来も心配される状況ではあるものの、マーケット的にはトランプ大統領の思い通りに推移する結果となりました。

米大統領選でマーケットはどうなる

就任後の4年間で株式市場に貢献したトランプ大統領ですが、今回の大統領選では窮地に立たされています。

注目が集まった大統領候補テレビ討論会では劣勢を覆せず、10月2日にはトランプ大統領自身が新型コロナウイルスに感染する事態となりました。その結果、大統領選のバイデン候補勝利者確率が60%台後半を記録する場面もあり、現在でも優勢の状態が続いています。

マーケットの観点では特にトランプ大統領感染の報道時にはマーケットも売りで反応し、リスクオフに傾くように思われましたが、現在ではバイデン候補の圧勝を織り込む形でのリスクオンの様相となりつつあります。

今後の注目点は大統領にどちらが選ばれるかよりも、バイデン候補勝利かつ議会の上院下院共に民主党となる“トリプルブルー”が実現するか、トランプ大統領が敗戦した場合に敗北宣言をせずに勝敗が決するのに時間がかかるのではないか、といったことに徐々に移っていくことも予想されます。

また、欧州を中心に新型コロナウイルスの感染が再び深刻化していることや、10月後半に多くの企業が予定している決算発表など、大統領選以外の要因が相場に影響を与える可能性もあるのでそちらにも注意が必要です。

前回は投開票日約10日前から劣勢を跳ね返し、見事な逆転勝利を果たしたトランプ大統領。今年も最後まで目が離せない展開になりそうです。

<文:Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>

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