はじめに

コロナ禍で考える機会が多くなった自分の「貯金」。貯金を増やすためには、どんな行動や考え方が必要なのでしょうか。そんな疑問を胸にお話を聞いたのが、FPの横山光昭さん。前回に引き続き、家計相談を行ってきた「お金の賢人」が、コロナ禍で身につけるべきお金の習慣を語りました。


儲けようという気持ちで投資を行ってはいけない

――前回の記事で、貯金をするための「支出削減」についてコツをうかがいました。2つ、3つでいいので、変動費の費目を家計簿アプリで記録するということでしたね。

はい。そうして毎月の増減を見ながら、自分が削れるお金、出費を考えていきましょう。お金を貯めるのがうまい人は、お金をかけなくて良い部分を見つけたり、お金をかけなくても楽しめる部分を工夫したりということに長けています。反対に「これじゃなきゃダメ」と固定観念を持っている人は、支出を減らしにくい。一度見方を変えて、本当に必要かどうかを見極めるべきでしょう。

――それが「支出を減らす」ためのポイントですね。ちなみに前回、貯金を増やすためには「お金を増やす(資産運用)」ことも大切だと伺いました。

そうですね。私の考えとして、資産運用は重要な手段だと思います。といっても、決してギャンブルのような気持ちで、一発儲けようと欲を出してやるのではありません。あくまで生活防衛として、長い人生を考えたときに老後資金を蓄える意味で行うのです。

コロナ前から老後2,000万円問題が話題になりましたよね。その内容は置いておきますが、これから年金の支給額は減っていくと考えられています。一方で、寿命は伸び、老後の期間は長くなる。となると、個人の貯金だけで老後資金を確保するのは難しくなってくるでしょう。だからこそ、資産運用を使って貯金を増やすという選択肢が貴重になってきます。

「投資は家計の延長線上にある」とは?

――とはいえ、投資は貯金を減らすリスクもありますよね。

もちろんです。その部分は強く認識しなければなりません。ですから私がよくいうのは、あくまで投資はすぐに使わないお金、余裕資金でやるようにということです。たとえば、春に数十万円を投資しようという方がいましたが、その数十万円は、数ヶ月後にお子さんの大学入学に必要なお金でした。そういった一か八かのリスクをとる投資は絶対にいけません。

よくいうのは「投資は家計の延長線上にある」ということです。投資だけではダメ、家計だけでもダメで、両輪のように回すことで初めて強く動くのです。つまり、自分の家計をきっちりと確立すると、長期に運用しても生活に支障を与えない余裕資金がどれだけあるかはっきり見えてきます。そういったお金を投資に回す。そしてその余裕資金が増減すれば、それに合わせて投資額も変えるのです。

――まずは家計を把握して、投資に使えるお金がいくらか認識すべきと。

はい。家計が面倒だから手っ取り早く投資で稼ぎたいというのはダメですね。投資だけにしか興味のない方は、自分の家計、余裕資金が見えていないのでうまくいきません。どちらかではないのです。

そしてもうひとつ、よくわからない状態でむやみに飛びつくのもNGです。「当たり前だ」と思うかもしれませんが、そういう方はとても多い。たとえば雑誌に出ている「この銘柄がすごい」といった記事を見て、その株を買う。他の人に言われてその株を買う。美味しそうだからと短絡的に飛びつくのは失敗の典型的パターンです。

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