はじめに
人気を集めたのは沿岸部や田舎
では、今夏のフランスでは、どれくらいのフランス人が休暇に出かけたのでしょうか。同報告書によると、全体の53%が今夏バカンスに出かけ、そのうち94%がフランス国内で休暇を過ごしました。EU域内からの旅行者は、ベルギー、オランダ、ドイツから多く訪れました。
休暇先として人気が集まったのは、沿岸部や内陸の田舎。例えばフランス北西部、英仏海峡に面したノルマンディー地方は、コロナ禍による観光客の減少が比較的軽微だった地方です。
ノルマンディー地方は、第二次大戦時にイギリスやアメリカなど連合国軍が、対独上陸作戦を決行した場所。そのため毎年多くのイギリス人が訪れます。今夏は新型コロナの影響で、イギリス人観光客は大きく減りましたが、その穴をフランス人観光客が埋めました。仏ル・ポワン誌は、ノルマンディー地方のホテルやレストラン、キャンプ場は例年と同じように回転したと伝えています。
フランス南西部の大西洋岸も成功を収めた場所ですが、さらに南部地中海沿岸は今夏、昨年と比べて23%増という、とても良いパフォーマンスを示しました。訪問者の多くはパリやその近郊(イル・ド・フランス地域圏)からやって来た人々です。南東部、スイスに近い山間部オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏も、ホテルの稼働率が前年よりわずかに上回りました。
首都パリは国内需要の恩恵は受けず
ただし、フランス各地が等しく同じ状況だったわけではありません。大都市やコルシカ島、フランスの海外領土は大変厳しい結果となりました。
コルシカ島は、飛行機や船に乗らなければ行けないという制約に加え、レンタカーの不足、移動制限が再び急に出された時のことなどを恐れ、来島者数は鈍化しました。あわせて、予約サイトがホテルに課す高額手数料に対するボイコット運動も、減少に拍車をかけました。結果、ル・ポワン誌によると、今夏のコルシカ島は例年と比べて6月は90%、7月は68%、8月は26%減少したそうです。
首都パリについては、ホテルの半数が休業を決め、部屋の稼働率も低く推移。南西部の中心都市ボルドーもパリと同じ傾向が強くなりました。一方、南仏の中心都市マルセイユは例外でした。
アメリカ、中国、ロシア、中東からの顧客に依存しがちな高級・高価格帯のホテルやサービスも同様に厳しく、国内需要でコロナ禍の不足を補うことはできませんでした。以前の記事(前回)(前々回)でもお伝えした通り、高級ホテル、レストラン、ハイブランドなども大きなダメージを受けています。