はじめに

雇用統計は蚊帳の外

しかも、この米雇用統計発表直後、選挙予測会社「ディシジョンデスクHQ」がバイデン当確の見解を出すというニュースが報じられ、ドルがさらに売り込まれる展開となりました。その結果、ドル円は103円19銭まで下落しました。

このドル売りですが、長続きすることはありませんでした。前述したように、米国債利回りが急上昇しており、米金利上昇に逆らったドル売りポジションはすぐにドル買戻しの動きにつながり、ドル円は103円72銭まで上昇しました。

米雇用統計発表時0.78%レベルだった米10年債利回り0.83%レベルまで上昇していました。もともと、「バイデン氏勝利=大規模経済対策=米財政赤字拡大=米国債利回り上昇」というシナリオもあった分、米10月雇用統計のベクトルとバイデン氏勝利のベクトルが、米10年債利回りでは一致したものと思われます。

その後は、米雇用統計、米大統領選結果とも関係ないロンドン市場でドルは下落しました。結果的に、米10月雇用統計は蚊帳の外だったように思われます。

今後の相場で注意したいこと

為替市場の見通しは米大統領選前からころころ変わっていますから、今後も大きく変わることが予想されます。かりにバイデン氏の米大統領選勝利が確定した場合、筆者が注目しているのは、バイデン氏公約の「所得 が100万ドルを超える富裕層を対象に、キャピタルゲイン課税の最高税率を約2倍の39.6%に 引き上げる方針」です。就任後に最も早期に着手できる政策ではないかと考えています。

<文:チーフ為替ストラテジスト 今泉光雄>

<写真:ロイター/アフロ>

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