はじめに
「損して得とる」の考え方もできるかも?
たしかにAさんの夫にしてみれば、数年先のことなんか確約できない、という思いもあるのでしょう。新型コロナ禍で働き方も含めて社会が激変するのを目のあたりにするとこれからどうなっていくか不透明と感じるのはごく自然なことです。
夫が何歳まで働くかにやきもきするくらいであれば、Aさんが今の職場で働き続けた場合の損得勘定を考えてみればよいのです。
まずは社会保険料の負担についてです。年収106万円で約15.8万円(年間)の支払いと前述しましたが、夫が会社を辞めた場合には否応なく負担することになります。
仮に年収105万円で勤務先の社会保険に加入せずに国民年金と国民健康保険の保険料を支払うと約25万4000円(年間、令和2年度・東京都での試算)になるのですから、勤務先で加入しておけば年間約10万円の負担減と考えることもできます。
さらに、勤務先の健康保険には所得補償として利用できる傷病手当金もあります。これは国民健康保険にはない補償です。また、厚生年金に加入することで老後の厚生年金受給額を増やすことも可能です。年収106万円で65歳まで10年間働いた場合には年間約5万8000円のプラス効果があります。
女性の平均寿命87歳まで受け取った場合には約127万6000円ですからそれなりの金額になります。Aさんが確実に扶養でいられる期間は夫が60歳までの2年間と考えると、来年から扶養を外れて勤務先の社会保険に加入したとしても損ではないかもしれません。
逆に厚生年金の受給額アップなどプラス面があることは将来の得でもあるからです。ここまででAさんの気持ちはほぼ固まったようです。