はじめに
扶養内にこだわる理由は「損をしたくない」
はじめに家族のことなどを伺いながら雑談を進めていくうちに状況がつかめてきました。Aさんの夫は3つ年上の58歳会社員、定年は60歳、65歳までは雇用継続制度で働ける環境にあります。
夫が会社員のうちは扶養内で働くことで、Aさん自身で国民年金や健康保険の保険料を払うことなく加入できます。しかし、年収106万円に到達するとその恩恵を受けられなくなり、手取り収入が減ることになるので損だと感じる、と。たしかにAさんがおっしゃる通りです。
例えば年収106万円になるとAさんが自分で負担する年間の社会保険料は約15万8000円(東京都・協会けんぽ保険料で計算)、その他に税金もかかります。ざっと計算するだけでも手取りの目減りは16万円以上にもなります。
あと5年間、扶養でいられるのか?
2020年11月現在、年収106万円で扶養を外れるのは原則として正社員500人超の企業で働く場合になります。企業規模については、順次改定されて2024年10月には正社員50人超まで範囲が狭められることが決まっています。
ということは、Aさんが扶養内にこだわるのであれば、50人以下の企業にパート先を変えることも一つの解決策と言えます。そうすれば年収130万円までは扶養内で働けるというおまけもついてきます。
しかし、今の職場は居心地がよくて人間関係にもストレスがないので、職場を変えるのは最終手段にしたいとのことでした。確かに職場の居心地も働く上では重要ポイントですから、他の方法も考える必要があります。
出発点に戻り確認したことは「扶養でいられる期間」についてです。58歳の夫は定年まであと2年、その後雇用継続になるとのことですが63歳まで確実に働かれるのでしょうか?
というのもAさんは、60歳まで国民年金に加入する必要があり、つまり、それには夫があと5年厚生年金に加入していることが前提となります。具体的には夫が63歳まで会社員であればAさんは被扶養者として保険料の負担なく国民年金に加入できるのです。
夫の雇用継続は1年ごとの契約ということですから、仮に63歳前に退職をすればAさん自身で保険料を支払うことになります。夫にいつまで働くか確認すると、わからないとのことでした。
夫の先輩たちをみていると65歳前に契約更新をしないで辞めてしまったケースも少なからずあるので、その時になってみないとわからないというのです。