はじめに

主要国における取り組みの加速

こうした削減目標の厳格化へと向かう国際的な潮流を背景に、各国は目標実現に向けた取り組みを加速させています。

気候変動を巡る取り組みが特に進んでいるのは欧州連合(以下、EU)です。2019年12月に、欧州委員会の委員長に就任したフォンデアライエン欧州委員長は、就任直後に2050年までの脱炭素化を達成することを目的とした「欧州グリーンディール」という成長戦略を発表しました。

「欧州グリーンディール」には様々な行動計画が盛り込まれていますが、中でも注目されるのが「炭素国境調整メカニズム」の導入です。「炭素国境調整メカニズム」とは、EU域外からの輸入品が、EUと同等のGHG排出規制を遵守せずに生産されていた場合、輸入時に関税を課す仕組みです。

この仕組みを導入することで、炭素リーケージ(規制の厳格化を受け、企業が生産拠点をEU域内から、より規制が緩やかな域外へと移してしまい、世界全体のGHG排出量は減少しないこと)の防止効果が期待されます。

現時点では、導入に向けた議論が進んでいる最中ですが、実際に導入された場合、日本企業を含めた、EUに輸出する企業への影響は免れないとみられます。他にもEUは、2050年までの脱炭素化に法的裏付けを持たせる「欧州気候法」や、サステナブルな産業活動を定義する「EUタクソノミー」の導入など、削減目標の実現可能性を高めるために野心的な取り組みを推進しています。

また、今後、気候変動政策を積極化させると予想されるのが米国です。11月に行われた大統領選では、民主党のバイデン氏が共和党のトランプ大統領を破り、次期大統領への就任を確実としました。

トランプ政権時にパリ協定から離脱した米国ですが、バイデン氏は大統領就任初日に協定へ復帰することを表明しております。また、バイデン氏は大統領選の公約において、2050年までにネットゼロエミッションを実現することを目標に掲げ、その施策の一つとして欧州の「炭素国境調整メカニズム」に近い国境調整措置の導入を挙げています。

加えて、就任100日以内に「気候世界サミット」という首脳会合を開催し、各国に対して削減目標の引き上げを直接要求する方針を示しています。今後、気候変動分野において米国がEUと共に主導的役割を担うことになるとみられ、日本に対する気候変動対策強化の国際的な圧力が高まる可能性があります。

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