はじめに
争いを避けるにはどんな方法がある?
生命保険金の受取人は、長女のともこさんにするべきでした。これにより、ともこさんは相続財産と同額の生命保険金を受取ることができます。そして、まさとさんが遺留分を主張した場合、遺留分である相続財産の4分の1にあたるお金を支払うことができます。
しかし、これでは争いになってしまうのは明確です。まさとさんに最低限の相続はしてもらい、争いをなくしたいというようこさんの想いを叶えるには、遺言に工夫が必要になります。
例としては、全ての財産を長女へ相続させるという遺言に追加して「代償金として○○万円を長男へ支払う」とするのです。この場合、記載方法は様々で「○○万円」とせず「相続財産の〇分の〇」と割合で指定することも可能です。
遺言だけでは「想い」は伝わらない
そして、もう1つ大きな効果があるのが「想い」を伝えることです。遺言というのは、法律に従い、財産をどのように相続させるかを記載します。遺言書を作成した時、身近にいれば「なぜ」このような内容になったのか想いを感じることができます。しかし、亡くなった後に遺言書だけを見た人はそれが分かるでしょうか?
それが自分にとって不利な内容であれば、余計に理解したいと思えないのではないでしょうか。このような時には、相続できなかった相続人は、「自分が愛されてなかったのでは」と感じてしまうこともあるそうです。
ですから、「なぜこの遺言書を作成したのか」の想いを残しておくことをお勧めします。その際には、あまりネガティブなことを記載しないことがポイントです。例えば「何もしてくれなかった」というような記載です。それよりも「感謝しています」という内容を伝えてみましょう。このような手紙は、遺言書に「付言事項」として残しておくこともできますし、改めて手紙として残しておくこともできます。
生命保険や遺言を検討する時は「なぜ」を伝える
以上のように、生命保険は相続という場面に素晴らしい効果を発揮します。しかし、使い方を間違えてしまうと大きな問題となってしまうこともあります。生命保険や遺言などを検討する際には、「生命保険に入りたい」「受取人を変更したい」「遺言書を作成したい」という相談の仕方をしないことをお勧めします。お勧めは「なぜ生命保険に入りたいのか」「なぜ受取人を変更したいのか」「なぜ遺言書を書きたいのか」の「なぜ」を伝えてみてください。相続に関する専門家であれば、より効果的な提案をしてくれるでしょう。
相続診断士:盛 勝利