はじめに

後発開発途上国でもビジネスは可能

多くの途上国が深刻な水や衛生分野における課題を抱えていますが、問題は地域によって様々です。

主な論点としては、(1)ある程度の経済成長が進んだ新興国か、後発開発途上国(最貧国)か、(2)都市部か、村落か、(3)水資源は豊富か、不足しているか、などが挙げられ、参入する支援団体や企業の関わり方も変わってきます。

後発開発途上国や一部の新興国で、支援ではなくソーシャルビジネス(社会的な課題の解決を持続可能なビジネスとして展開)として取り組んでいるのが、日本のLIXILグループです。簡易式トイレシステム『SATO(サト)』は、1台当たり数ドル、1回の洗浄に必要な水の量は約0.2~1リットル、設置やメンテナンスが簡単などの特徴により、貧困や水不足が厳しい地域でも使用可能です。

さらに、可能な限り現地で製造、販売まで手掛けることで、新たな雇用創出にもつながるなど、持続可能なビジネスモデルを構築している点は特筆すべきでしょう。コロナ禍では、プラスチック製の本体にペットボトルを差し込むことでどこでも手洗い環境を作ることができる『SATO Tap』を開発しました。感染拡大が収まらないインドなどですでに量産化されています。

ユニリーバのBOPビジネス

BOPビジネス(途上国の低所得者層向けビジネス)に先駆けて取り組み、成功しているのが、日用品の世界大手オランダのユニリーバです。例えば、インドの「プロジェクト・シャクティ」では、低所得者層の女性を職業訓練し、マイクロファイナンス等で資金を貸し付けます。彼女たちはその資金で同社衛生製品を仕入れ、村で販売するという仕組みです。現地にとって、女性の経済的自立や衛生の啓発につながる一方、同社は安価に販売網を構築可能です。

BOPビジネスの最大のメリットは、将来の中間層の取り込みといえるでしょう。国の経済成長に伴って、BOP、つまり、ピラミッドの底辺にいた低所得者は、巨大な中間層となります。その時、慣れ親しんだブランドへのロイヤリティから、彼らは同社のより付加価値の高い製品を購入するようになるのです。結果、ユニリーバは売上の半分程度を新興国が占めるまでになっています。

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