はじめに

水ビジネスはメジャーが席巻、日本企業の存在感は?

世界には、中東やシンガポールのように、資金はあっても水や水に関するノウハウがない地域があります。こうした地域で期待されるのが水ビジネスです。世界の水ビジネスの市場規模は、2020年に約100兆円とも試算され、上下水道が約8割、産業用水・排水が約2割を占めます。なお、日本企業が技術を持つ海水淡水化はそのうちの1%にもなりません。

世界の水ビジネスにおいて圧倒的な存在感を持つのが、フランスのヴェオリア・エンバイロメント、スエズといった水メジャーです。両社は、水処理事業の計画に始まり、設計、調達、建設、そして、事業経営、保守に至るまで一貫して手掛けることで、世界各国で幅広く事業を展開しています。近年は、シンガポールや韓国等の新興国企業も台頭し、事業領域を拡大しています。

シンガポールは、現在、需要の65%を雨水収集・汚水の再利用(40%)と海水淡水化(25%)で賄っており、マレーシアとの水の輸入契約が切れる前年の2060年までに85%(再生水55%、海水淡水化30%)に引き上げる計画です。なお、海水淡水化技術で注目されたシンガポールのハイフラックスは、2018年に経営破綻し、現在も再建は迷走しています。

水の自給を悲願とする政府の政策の後押しもあり成長しましたが、発電事業の失敗や海外事業の不振により、資金繰りに行き詰まりました。水ビジネスは、非常に公共性が高い事業だけに、健全な財務基盤や高い倫理観に基づいた経営が求められます。

ハイフラックスの海水淡水化施設は、政府が接収して運営しているほか、シンガポールの複合企業ケッペル・コーポレーションなども水事業を手掛けています。同国は引き続き、中東と並び、水ビジネスの中心といえるでしょう。

日本勢は、総合商社が、カタール(三井物産、三菱商事)、アラブ首長国連邦(丸紅)、オマーン(住友商事、伊藤忠商事)など中東地域において、発電・造水(海水淡水化)事業に参画しているほか、新興国での上下水道のコンセッション事業(公共施設等運営権制度)等を手掛けています。もっとも、政府が水ビジネスを含む海外へのインフラ輸出を掲げてきましたが、目立った成果はあげられていません。