はじめに
資産の取得は必要最小限に
近年生じている資産の保有構造の揺らぎは、政府・中央銀行による経済・金融政策による大きな副作用ともいえるでしょう。
日本銀行法には、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として掲げています。中央銀行の目的は、資産価格を上昇させて資産の保有構造をゆがめることにあるのではありません。そうではなく、価格の安定をもって、資産の保有者も非保有者も安心して財を構築し、健全に経済活動を営める環境を創出することにあるはずです。
資産価格が大きく変動している環境下で、家計ができることはそう多くありません。現在の状況のなかで私たちが意識すべきことがあるとすれば、新しく形成する資産は必要最小限にとどめ、過度なリスクを取らないことに尽きるでしょう。
資産価格が上昇しているから今後もそれが続くことに賭けて保有資産を過度に増やすということは避けるべきです。一方で、住宅など生活にどうしても必要な資産については、立地や広さなどを調整し、取得額が必要最小限になるようにとどめておくことが望ましいといえます。
住宅価格の高騰によって、定年後も続く長期に渡る住宅ローンを組む人も増えています。繰り上げ返済を想定しながらも、できるだけ長く働き続けることを視野にいれなければいけない時代になったと受けとめざるを得ないでしょう。