はじめに

Go To キャンペーン、資金繰り支援、雇用調整助成金は延長

評価できる点はGo To キャンペーン、資金繰り支援、雇用調整助成金の特例措置(助成率100%)の延長です。

10月の景気ウォッチャー調査では、改善の方向感を示す現況DIが2014年以来となる54.5まで上昇しました。けん引役となっているのが飲食業と旅行業で、現況DIがともに過去最高となったほか、水準でも通常の閑散期のレベルまで大幅に回復しています。

景気ウォッチャーによるコメントでは「Go To キャンペーン」という文言が80回も登場し、7月から開始されたトラベル・イート事業の本格化が回復の起爆剤になったことがうかがえます。

飲食・旅行業は、引き続き厳しい経営状況が続いているものの、落ち込みを和らげたという点でGo To キャンペーンが飲食・旅行業にとって大きな助けとなったのは明らかです。感染拡大を受けて当面は縮小を余儀なくされるものの、感染が鈍化した時点で迅速に再開できる体制が望まれます。

雇用調整助成金の特例措置と資金繰り支援の延長も、事前に広く予想されていましたが、評価できる内容です。平時であれば、収益力の乏しい企業を資金繰り支援によって延命させることは好ましくありません。しかし、失業予備軍ともいえる休業者は依然として170万人おり、このまま企業が破綻し大量の失業が発生すると、その後の回復もおぼつかなくなります。

景気回復を確実にしていくためには企業の存続と雇用の維持が必要です。今回の補正予算はこれらの最低ラインはクリアしたと言えます。

家計向け給付金は含まれず真水は予想以下

一方、失望的だったのは家計向け給付金が含まれなかったことです。コロナ禍の特徴として、年金受給世帯をはじめとした大部分の家計収入への影響が限定的な一方、一部業種に属する世帯で収入が大幅に減っていることが挙げられます。

「新しい生活様式」からの出口が見通せない中、収入が大幅に減った世帯に限定してマイナンバーに紐づけて30万円を給付するという当初の案を中心に、家計向け給付金は前向きに検討されるべきでした。

今回の補正予算では脱炭素減税などの地球温暖化対策も目立ちますが、コロナ禍において家計向け支援よりも優先させるべき政策課題とは思えません。また、今回の補正予算に合わせて高齢者医療費負担の2割への引き上げと児童手当の削減も閣議決定される見込みで、家計負担はむしろ増えるというやや信じがたい状況です。

世耕参院幹事長が「30兆円ぐらいの真水があってもいい」と発言するなど予算の大型化観測も出ていましたが、実際の真水の金額はそれを大きく下回りました。また、今回も予備費が5兆円含まれるほか、脱炭素基金など短期的な景気の支えにはならない項目も計上されており、見た目以上に中身に乏しい印象です。

今回の第三次補正予算は家計向け給付金や持続化給付金が含まれた第一次、第二次補正と比べて大幅に見劣りしています。著者は、必要最低限なレベルはクリアしたものの期待に沿う内容にはならなかった、と評価しています。

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