はじめに

生前贈与の王道的な手法「暦年贈与」

財産を移転する際の課税は、生前では年間の贈与額に応じて贈与税が年ごとに課税され、亡くなった時に基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の人数)を超える分の財産には相続税が掛かります。贈与税は年間110万円までは非課税枠(基礎控除)があり贈与税はかかりませんので、毎年親族へ資金を贈与していくことが基本です。これを暦年贈与といいます。

年間110万円までというのは、贈与を受ける人単位ですので、長女が結婚し孫ができた際には、長女、長女の旦那、孫へそれぞれ贈与していくことが出来ます。逆に、例えば同じ年に2人から100万円ずつ贈与を受けた場合は200万円の贈与を受けたものとして贈与税が課税されます。

孫が産まれて幼い頃からでも生前贈与していくことは可能です。未成年の孫への贈与は親権者(孫の親である長女夫妻)が法定代理人として管理します。なお、未成年者への贈与は法定代理人が同意すれば贈与契約は成立し、未成年の子が贈与契約の事実を知っていなくても無効にはならないとされていますので、贈与契約書に受贈者の孫の名前だけでなく法定代理人の父母も署名押印し、成年になるまできちんと管理してあげることになります。

超過累進税率の仕組み

贈与税・相続税ともに、贈与額・相続額が多くなるにつれ超過累進税率が適用されます。親から子、孫への贈与・相続を、なるべく低い税率で進めていくことが、税金の観点からは有利になります。例えば、310万円を贈与すると(310万円- 110万円)×10%の20万円の贈与税が掛かり、310万円に対して6.4%の課税です。

相続税は基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の人数)を超え、法定相続割合で税額を出し、取得額で按分します。仮に相続時に2憶3600万円以上の財産があり、妻と子どもに基礎控除後に法定相続割合でそれぞれ1億円を超えると、5000万円超1億円以下の部分には30%、1億円超2憶以下の部分には40%の相続税が課税されます(一次相続で妻は配偶者控除で課税はありませんが、ここでは詳細は割愛します)。

相続前3年内の贈与と親が出した生活費には課税されない

年間の贈与税の税率と相続時の相続税の税率を考えながら、贈与と相続を合わせてより低い税率で長期的に生前贈与を進めていくのが、生前贈与の有利な方法の基本的な考え方となります。相続前3年内の贈与は相続財産に加算されますので、相続直前での贈与は対策になりません。また、蓄財ではなく費消する生活費等を社会通念上で常識の範囲内で親が子どもや孫の生活費の面倒を見ることは贈与に当たりませんので、子どもの生活費等を親が出してあげることは相続財産を減らすという意味では相続税対策となります。

もっとも、これらは税金のことだけを考えた場合ですので、子どもの経済観念への教育方針とも合わせて適正な範囲で考えていくのが良いでしょう。また、法律的には、贈与をした資金は贈与を受けた人の財産になり、贈与者は自由に出来なくなりますので、ご自身のライフスタイルも踏まえてプランを考えていきましょう。

ご質問者がまだ52歳という年齢を考えれば、今から暦年贈与を続けていけば、非課税枠の範囲内や低税率の贈与税で、それなりの額を生前贈与していくことは出来るでしょう。まだまだ現役でお仕事もされているでしょうから、財産の将来シミュレーションと生前贈与でいくら残していきたいか、子どもに相続財産としていくら残してあげたいか、予備資金やご夫婦の老後の楽しみとしてどうしたいかなどを考慮しながら計画を立てていくと良いでしょう。