はじめに
生前贈与をしたつもりで「名義預金」にならないよう注意
生前贈与で問題になりがちなのは、親が勝手に預金口座の名義だけ子どもなどのものを作成し、お金を移していくだけで親が自分で管理をしている場合で、生前贈与が有効になっていないようなケースです。税務上は名義が置き換わっただけで、「名義預金」と言いますが、財産が贈与者である親に帰属したまま状態となります。税務調査等があった際に相続時に被相続人の相続財産として認定されてしまいますので、確実有効に生前贈与を進めることが重要です。
名義預金とされてしまうケースでよくあることが、親が子ども名義の口座を作って資金を移していたが、その預金口座の管理(通帳・印鑑などの保有)を親がしていたり、贈与で資金を移した口座から贈与者であるはずの親の生活費等のために引き出しがされてしまっている場合などです。
「名義預金」にならないように、踏むべき手順
各人別に「贈与契約書」を毎年その都度作成し、各人が印鑑をご用意ください。贈与者と受贈者の届出印が同じであると、税務調査で「名義預金ではないか」という指摘を受けやすくなります。出来れば、贈与者・受贈者各人でそれぞれ印鑑を作成・使用し、それぞれ各人が保管・管理してください。また、贈与契約書の日付・住所・氏名は自筆がベターです。
そして重要なことは、贈与資金は贈与を受けた人の財産ですので、受贈者がお金の管理をしてください。未成年の孫へ贈与した場合は上述の通り親権者である親が管理します。また、毎年その都度、贈与の手続きをします。例えば、ある年に500万の贈与を決定して5年間で分割払いしたものなどとされないためです。そのため、贈与自体は口頭であげる人ともらう人の双方の意思があれば有効に成立しますが、毎年、贈与契約書を作っておくことが無難です。
「あえて贈与を年間110万円以上にして贈与税申告をすることで贈与の事実があったことを確かなものにできる」と解説されることがよくありますが、贈与税申告をしたことをもって必ずしも贈与の事実が税務上確定するものとはなりません。受贈者に知らせず親が勝手に贈与税申告をしているような場合は「名義預金」となります。子が自ら贈与税申告を行うことは、親から受けた贈与を確実に認識していた証拠の1つとなる可能性はありますが、実態としてきちんと有効な贈与の手続きをしていれば、年110万円ずつの贈与をあえて111万円以上にして贈与税申告をするかどうかは、各人の判断で構わないでしょう。