はじめに

日本海で揚がって9時間で店頭へ

――例えば新潟で仕入れた魚が、関東圏の角上魚類に納入され、食卓に並ぶまでの「時間」はどれくらいなのでしょうか?

栁下: 日本海で水揚げされてから、最短で9時間ほどで店頭に並ぶことになります。競りをやり、数多くの種類の魚を仕入れ、関東圏まで持っていくということをやっている魚屋は角上だけだと思います。

――東京の魚屋さんや魚を扱う寿司店などは、敷居が高いような、客が店主の顔色を伺いながら買う・注文するような風潮があります。角上魚類は良い意味で敷居が低く、手に取りやすい安い魚も数多く陳列されています。違いはどこに?

栁下: 開業当初に私が掲げた指針に「4つの良いか」「社心」というものがあります。「4つの良いか」とは「鮮度は良いか」「値段は良いか」「配列(品揃え)は良いか」「態度は良いか」といったもの。

「社心」とは社訓のようなものですが、「心」という言葉を使ったものなので、「社心」と呼んでいます。「買う心 同じ心で 売る心」というものなのですが、お客さんと同じ気持ちを持ち、その上で魚を買っていただこうという行動指針です。

この「4つの良いか」「社心」は45年前から角上ではずっと続けている指針であり、今でも22店舗全ての店に貼っています。なので、これから先も我々のやり方でお客さんに喜んでいただくことを最優先に営業していきたいと思っています。

日本海で上がった魚が数時間で関東圏の食卓へ。ちなみに魚の鮮度を保つために発泡スチロールを初めて採用したのも実は栁下会長だそうです

栁下会長が考える「日本一の魚屋」とは?

――角上魚類の今後の目標をお聞かせください。

栁下: 当初は今のような規模の魚屋になるとは夢にも思っていませんでした。前述の通りあくまでも「地域の人たちに慕われる魚屋にしたいな」という理由だけでしたので。しかし、それがやがて関東圏のお客さんにも信頼していただくようになり、売り上げを落とすことなく伸ばし続けています。

これはつまり、最初の「地域の人たちに慕われる魚屋」として、地元・寺泊以外の関東圏の各地域のお客さんにも認めていただいたからだと思っています。それだけの期待を、これからも裏切ることがあってはなりませんし、これからも「4つの良いか」に従って続けていきたいと思っています。

今から20年前、私は「日本一の魚屋になる」と掲げました。しかし、それは「売り上げが日本一」「店舗数が日本一」ということではないんです。

現在展開している22店舗の各地域で暮らす皆さんが、「魚を買うなら断然角上だ」と言っていただけることを指しています。各店舗が地域で一番評価される店になったら、それこそが私が考える「日本一の魚屋」です。これからも「日本一の魚屋」を目指して続けていきたいと考えています。

日本海を見渡すことができる角上魚類本社の社長室での栁下会長

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