はじめに

2020年の不動産市場では、コロナ禍により、ホテル・商業施設・オフィスにマイナスの影響が出ています。一方で、安全性が高いと見られている物流施設・賃貸住宅には投資資金が集中しています。金融緩和の継続で企業や不動産投資希望者の不動産関連融資の借りやすさも継続しているため、物流施設・賃貸住宅の価格はさらに高値となる可能性があります。


落ち込んだ用途は?

2019年末までの不動産市場は、インバウンド客の増加を背景に、ホテルや商業施設を中心に好調でした。2020年初頭においても、オリンピック後の一時的な価格下落懸念を除いて、不動産市場のリスクを指摘する声はほぼなかったように思います。しかし現在コロナ禍で経済が急速に冷え込んでおり、不動産市場にも影響が出ています。

不動産の用途別に見てみると、特にホテルへのダメージが非常に大きくなっています。国内での移動自粛や外国人旅行客の入国制限からホテルの稼働率や宿泊料金が急落したことに加え、ホテルは東京、大阪、京都などの都市に集中しており、価格競争で収益が回復しづらい状況が続いています。完全な正常化には2~3年の時間が必要との見方が多くなっています。

また、外出自粛とソーシャルディスタンスへの対応で来客数が減少し、収益が悪化したテナントである飲食店舗の退店が相次いでおり、都市部の商業エリアでは、賃料も下落基調に変わってきています。また新たなテナントが入居するにも時間がかかると思います。

さらに、オフィスについては今後の賃料下落が懸念されています。空室率が大きく上昇するとオフィス賃料は下落しやすくなりますが、三鬼商事によると、今年の4月には1.64%であった東京の主要ビジネス地区の空室率は、11月には4.33%とやや上昇しました。ただし、空室率が10%近くあった2009年頃ほど空室率は高くなく、当面はオフィス賃料が大きく下がることはないでしょう。

図表1 不動産売買総額(前年比)

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