はじめに
そして、不動産売買市場ですが、不動産の売買事例を収集しているReal Capital Analytics社によると、2020年10月末までの売買額の累計は、2019年通年の累計に対して▲35%(図表1)、また、同様に売買件数は▲29%と減少しています(図表2)。例年の傾向から、年末に駆け込みで取引が行われることは多くないと予想されますので、2020年通年の売買総額は前年比で▲2割前後になるのではないかと思います。
不動産の用途別の取引動向にも変化が起きています。不動産投資の対象となる主な用途は、オフィス、賃貸住宅、商業施設、ホテル、物流施設ですが、収益性に懸念が生じている用途が全体に占める割合は、ホテルは▲3%、商業施設は▲4%、オフィスは2019年比▲4%と低下しています。
一方、巣ごもり需要で通販業者などの賃貸希望が増加している「物流施設」、経済活動停滞の影響を受けにくい「賃貸住宅(マンション)」など、安定的とみられるセクターには投資をしたいという投資家が殺到しています。しかし、物流施設は建設の段階から保有者が決まっていることが多く、他に比べて売りに出されることが少ない用途です。全体に占める割合も、2020年10月末までの累計で17%(2019年比+3%)とそれほど増えていません。かわりに、最も投資資金を引き付けたのは賃貸住宅で、全体に占める割合は21%(2019年比+9%)へと上昇しています(図表3)。
もう少し賃貸住宅の売買について詳しくみてみると、2020年(10月末まで)に取引された賃貸住宅は、2019年(10月末まで)に取引された賃貸住宅とはやや異なっています。