はじめに
過疎地の場合は?
――一方で、地方都市や過疎地は難しいですか?
それも一概には言えないんです。不動産サイトには、エリアや間取り、駅からの距離などが条件になっていますが、そういう基準とは無関係の偏ったニーズというのが確実にあります。
田舎暮らしをしたい人には山奥の過疎地は選択肢になるでしょうし、津波のリスクが指摘される場所でも、たとえば海まで2分の家はサーフィンをする人には魅力的。そうしたニーズとマッチングできれば、売却をしたり貸すことができます。「どうせ売れない・貸せない」と凝り固まって考えるのではなく、柔軟に考えるといいと思います。
――手放したくはないという場合、人に貸すというのもひとつの活用方法ですよね
先ほど言ったように郊外の人気は上がっていて、かつ、広い一戸建てで子育てをしたいという人は少なくありません。すでに周辺にアパートが建っているようなエリアであれば、一戸建て賃貸はニーズがあります。うまく賃貸できると家賃収入が得られますし、人が住むことで家の老朽化を防ぐことができるというメリットもありますね。
――デメリットはありますか?
賃貸といっても、その方法はいくつかあります。ひとつは、自身が貸主となり、借主と契約するといった方法。ただ、家の傷みが激しいと賃貸に出す前に修繕する必要がありますし、貸したあとでも家に不具合が出ると、その都度修理をしなくてはならなくない。また、借りていた人が退去したら、次に貸すためにリフォーム費用がかかります。場合によっては、出費ばかりがかさむことになる。こうした賃貸経営のリスクは事前に考えておくべきですね。
――簡単ではないですね
自分で貸すのではなく「サブリース」という方法もあります。「サブリース」は事業者が空き家を借り上げ、事業者がリフォームなどをして貸し出して、契約期間が終わればオーナーのところに戻ってくるというもの。管理がかからず、一定の賃料を受け取ることができます。
――それなら、賃貸経営のリスクはありませんね
今後、利用者は増えていくと思います。あと、親が生きている間は住み続けるけれど、その後は処分していいというケースであれば、「リースバック」という方法もあります。自宅を事業者に売り、その代金は一括で受け取りつつ、家賃を支払って生活し続けるというものです。ただ、売って価値があるところでないと事業者も買ってはくれません。土地を担保に融資を受け取る「リバースモーゲージ」も同様ですが、その土地や家に価値があることが前提となります。都心部など、利用できる場所は限られる方法になってしまいますね。
――売ることも、貸すこともできない場合はどうしたらいいのでしょうか
周辺状況にもよりますが、駐車場にするのがもっとも費用負担が少ない利活用の方法です。家屋を壊して砂利をひいて、駐車場として貸し出す。家屋を壊すことにより住宅用地の特例が無くなり土地の固定資産税は上昇しますが「家賃収入と固定資産税がトントンにできればいい」という人は多いですよ。ただ、郊外になると駐車場のニーズは低くなるので、これも都市部での話になりますが。
――地方のどうしようもない場所はどうしましょう
過疎地で不動産屋さん自体がないところでは、正直、難しい。諦めるというと言葉は悪いですが、隣地の方にタダでもいいからひきとってもらうというのもひとつの方法です。
――いらないと思っていても、タダで手放すとなると抵抗があります
気持ちはわからなくもありませんが、少なくても、その先ずっと続く固定資産税の負担と管理責任からは免れることができます。あとは、親族全員が相続放棄して、家庭裁判所に相続財産の管理人を立てて国庫に帰属させるという方法もありますが、これもお金と時間がかかる。不動産の処分というのは、単純じゃないんですね。
――捨てることもできない……
地域の不動産屋さんに相談して、「活用したい人がいたら声をかけて」と言っておくといいと思います。何にも使いようのないように思われる土地でも、「管理地」の看板を立てておくとトラックを止めたいとか、資材置き場にしたいとか、意外なニーズはなくはない。そういうところに借りてもらえるとすごくいいですよね。