はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年春以降、企業の活動は「オンライン」への変更を余儀なくされました。採用活動においても、会社説明会や面接はオンラインが中心となる企業が増えました。しかし、入社後の立ち上がり支援など一部の業務では、オンライン化は難しいと悩みの声も聞かれています。

そんな中、一貫してオンライン化を実現した企業があります。株式会社overflowは、2017年に創業したエンジニア/デザイナー複業採用プラットフォームOffersを運営するIT企業です。創業時からリモートワークを多用してきましたが、コロナ禍の2020年4月にオフィスを解約し、採用活動はもちろん通常の業務もすべてオンライン上で完結させています。

具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。overflow代表取締役CEO 鈴木裕斗さんにお話を伺いました。


取り組んだのは徹底した「ドキュメント化」

―― 「オフィスを手放す」と決断するまでのプロセス、そのときの思いをお聞かせください。

鈴木裕斗氏(以下、鈴木):企業がオフィスを構える目的は2つあると思います。一つは「生産性」、コピーを取るにも会議を招集するにもオフィス機能があれば効率が良いためです。しかし今は様々なITツールで代替可能になりました。オフィスがなくても生産性が落ちることはないと考えています。

もう一つは「感性の共有」だと思います。同じ空間で同じものを見聞きし、体験する。それが会社の文化や組織風土を創り上げます。ですので、この点については物理的空間をなくすことに不安もありました。しかし一度その前提を取っ払って、物理的なオフィスがない状態で感性を共有し、カルチャーを築くことに挑戦しようと考えました。

―― そのために取り組んだのはどんなことでしょうか。

鈴木:会社の方向性や、なぜこの施策をやろうと思ったかという背景を、テキスト、つまり文字情報で伝えることに注力しました。私だけでなくメンバー全員にも、担当する施策の背景・目的・課題・やろうとしていることはすべて文字にして伝えよう、と呼びかけています。

さらに、メンバー皆にわかりやすくなるよう、また効率を妨げないよう、やりとりする文字情報も目的に応じて使うツールを分けることにしました。

具体的には、普段のコミュニケーションはチャットツール『Slack』を使っていますが、Slackに長文を書くのは非推奨です。Slackはフロー情報と日常コミュニケーションに特化しています。一定文量以上はドキュメント(文書)共有ツールを使用し、そこで議論を行います。今では1日あたり50~60個のドキュメントが作られています。

Slackで相談して解決できればそれでOK、「背景や目的がよくわからず、意思決定ができない」となれば共有されたドキュメント上で議論します。さらに相談が必要であれば、最終手段としてWeb会議を開く。そんな流れで進めています。

―― そうしたスタイルに移行したことで、メリット・デメリットはありましたか?

鈴木:文章を書く量はかなり増えました。ですが文字にすることで、背景や意図を汲み取りやすくなりました。また、後から振り返って確認できるのがいいです。これをコミュニケーションの資産化と呼んでいます。

また、「雑談」の有効利用ができるようになりました。オフィスであれば、「1対1のちょっとした雑談」は、その場で完結して流れていきがちです。Slackやドキュメント中心でコミュニケーションをとるようになったことで、そんな「雑談」も多くのメンバーに共有されるようになりました。

雑談の中には重要なアイデアや情報も含まれていますから、それらが無価値になるのを防いでいると感じています。

会社の「哲学」や「理念」など、メンバー全員に心に留めておいてほしいメッセージも、ドキュメントで伝える場面が増えました。実際、個々で自由なタイミングで読み直したりできるため、メンバーに浸透しているという手応えを得ています。

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