はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
今年から社会人になりました。投資の手始めとして、確定拠出年金を選択しました。3時間程度の説明を受けたものの、うまく運用する方法について正直あまり理解できていません。業務も忙しく、今後、運用まで気が回らないと思います。効率のよい運用の仕方、毎年確認すべきポイント、気をつけたほうがよいニュースなどがありましたら教えてください。せっかく貰えるお給料ですので、より利益を得られる運用をしていきたいと思っています。現在の月収は30万円、少しずつ収入が上がっていく見込みです。負債はありません。
(20代前半 独身 男性)
深野: 確定拠出年金に関するご質問ありがとうございます。加入にあたって3時間程度のご説明があったようですね。私が確定拠出年金の加入者教育に関する講師を行っていたときも、短いと2時間、長くても2時間半程度のセミナーでした。
いずれにしても短いですので、これまで投資を行っていなかった初心者の方にとって理解することは難しいと言わざるをえません。
それでは回答に移らせていただきます。
預金や保険は資産形成には向かない?
まず、確定拠出年金は老後資金を準備するための制度です。そのため払い出しは60歳以降になり、ご質問者の方の場合、おおよそ40年間運用ができるはずです。
基本は投資信託を利用し、国際分散投資を行うことになるでしょう。ただし、運用する商品は投資信託を含め、いつでも変更することができるはずです。
そのほかの資産形成の方法としては、預金や保険型商品への加入があります。預金の場合、元本は守られますが、将来的に金利が大幅に上昇しなければ、資産を増やすことは難しいでしょう。保険型の商品についても、もしもの時には役立ちますが、資産形成を主とした商品ではありません。
また、預金や保険はインフレに弱い商品ですので、その点でもお勧めすることはできません。
確定拠出年金と積立貯蓄で分散投資を
ご質問者の方は新卒と若いうえ、今後は確定拠出年金のほかに自分自身で積立貯蓄をするなどして資産形成を行っていくことでしょう。
ご自身できちんと積立貯蓄を行う前提であれば、確定拠出年金での運用は全額株式で運用される投資信託でよいと思われます。確定拠出年金と積立貯蓄で、分散投資ができていることになるからです。
その場合、通貨分散を考慮するために確定拠出年金で運用する投資信託は海外の株式で運用される投資信託1本、あるいは日本株と海外株で運用される投資信託の組合せがよいでしょう。
また、掛け金の配分は、国内株3割、海外株7割あたりとされるとよいでしょう。基本に忠実にいくのであれば、掛け金で国内外の株式、債券で運用される投資信託を組み合わせるべきです。
そして、資産配分はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を参考にして、国内債券30%、国内株式24%、海外株式24%、海外債券14%でよいと思われます(※平成29年6月末現在)。
日々のニュースに一喜一憂しないこと
加えて気をつけた方がよいポイントは、長期運用となるため、日々のニュースなどに一喜一憂する必要はないということです。
せいぜい半期に1回、運用状況を確認する程度でよいはずです。仕事に余裕ができたら、資産運用の専門書などを読んで勉強するようにしてください。
余裕があるのであれば、自分の興味があることから資産運用の勉強を始めると、仕事に役立ち、よいでしょう。毎日、新聞を読む、ニュースを見るなどの情報収集に努めてください。面白味はなくとも、コツコツ続けることが将来きっと役立つはずです。