はじめに
都議選での与党敗北がケガの功名に?
7月の都議選では、与党自民党が期待された議席を十分に確保することができず、「失地回復」とはなりませんでした。現在の東京都における感染状況を見れば、有権者からの風当たりの強さはやむを得ない面もあるでしょう。ただ、秋に控える国政選挙の前哨戦となる都議選で、連立与党が厳しい現実を突き付けられたことは、菅政権にとっては、かえって良かったのかもしれません。なぜなら、政府が的確に現実を把握できたことで、衆院選の課題が浮き彫りになったと考えられるためです。
適切な対策(感染対策の強化や大規模な景気対策の策定)のもとで、衆院選に臨むことができれば、与党が歴史的な大敗を喫すリスクは減退されるでしょう。政治の安定は相場の安定に必要不可欠な要素ともいえ、無難な通過が望まれます。秋の選挙を波乱なく乗り切ることができれば、経済再開の波とともに、年末に向けた日本株には、出遅れの挽回が期待できると思います。
日本株(TOPIX)の12か月先予想PERは、前月からさらに低下して15倍台前半の水準にあります(7月26日時点)。かたや、米国株(S&P500)の予想PERは21倍台の後半で、日本株を大きく引き離しています。両者の差が6ポイント以上開く状態は、あまり例がなく、15倍台という絶対水準もさることながら、米国株と比較した相対感でも、日本株は割安な状態に置かれていると判断できます。
以上から導かれる結論は、これまでと変わらず、ワクチン格差によって生じた株価パフォーマンスの格差は、時間さえかければ、埋め合わせ可能と考えます。その結果、日経平均株価は年内に再び3万円の大台を回復すると予想します。
<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>