はじめに

なぜ遺言書作成が必須となるのか

この状態でもし、遺言書を作成せずに静子さんが亡くなったとしたら、どうなっていたのでしょうか。

遺言書を作成していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、静子さんの財産を誰がどのように引き継ぐのかを話し合うことが必要になります。今回の場合、学さん・美智子さんの2人で話し合いをすることになります。

実際には、静子さんが亡くなった時点で、学さん・美智子さんが存命かどうか最新戸籍を取得し確認します。学さん・美智子さんがご存命の場合は、連絡を取り、遺産分割協議ができる状態なのかを確認します。

遺産分割協議ができる状態というのは、判断能力があるかどうかということです。たとえば年齢が若くても事故や病気で意思疎通ができず寝たきり状態であったり、認知症等で自らが行った行為の結果を認識することができない状態であれば、「成年後見人」を選任しなければ遺産分割協議を行うことができません。

遺産分割協議が難しいとなると、静子さんの財産はその時点では誰も引き継ぐことができなくなります。その点、遺言書があれば、美智子さんは遺産分割協議を行うことなく、すべての財産を引き継ぐことができるのです。

推定相続人を正しく知ることが相続対策の第一歩

静子さんには調査した推定相続人の報告をし、遺言書の内容を再度確認しました。そうして無事、公正証書遺言を作成することができました。

今回、静子さんは、学さんの存在が分かっても遺言書の内容を変更するお考えはなかったので、そのまま進めました。しかし、場合によっては推定相続人の遺留分に配慮して遺言書を作成しなければ、争いを招く結果になる可能性があります。

このように、ご自身とは直接関係のないところで家族関係が変わり、結果としてご自身の推定相続人が思っていたものと相違することもあるのです。

「財産をどう分けるか」ということも大事ですが、その前にご自身の戸籍を取得して推定相続人を正しく知る。これが相続対策を行う初めの一歩になることでしょう。