はじめに

格差の是正が出来るのか?

財務省によれば、2019年時点の所得が5,000万円から1億円の所得層だと所得税負担率が27.9%であるのに対して、20億円から50億円の所得層では負担率が18.9%に下がるとしています。これを「1億円の壁」と言ったりもしますが、この歪な状態を改善したいが故に金融所得税の税率引き上げを提唱したのですが、本当にそれだけで格差が是正されるのかは疑問です。

日本では2003年から「貯蓄から投資へ」という標語が掲げられ、投資人口が広がるように様々な変化が生じてきました。NISAやiDeCoなどの非課税制度が整備されたり、証券会社や運用会社の企業努力もあって投資にかかる手数料は一昔に比べればとても安くなりました。また、SNSやブログ、YouTubeなどで個人投資家自身が「つみたて投資」など敷居の低い投資法を啓蒙していることもあり、着実に個人投資家の数は増えています。

仮に金融所得税の税率が引き上げられた場合、当然ながらこの数年で投資を始めた個人投資家にも影響はあり、いわゆる富裕層ではなく、余剰資金の一部をコツコツと投資しているような小口の個人投資家の税負担も高まり、本当の富裕層は租税回避してそれほど影響を受けないことも想定されます。

筆者は2018年から日本で金融教育を普及させたいと思い株式会社マネネを創業し、これまでにたくさんの親子へ金融教育の講演をしてきましたが、やはり未だに投資で儲けている人はずるい、悪いなどのネガティブな印象を持つ人が多いと感じています。

格差是正といって金融所得税の税率引き上げを唱えれば、国民からの支持率は上がるのかもしれませんが、投資家はリスクを取っているし、なかには時間や労力をかけて分析して勝率をあげるための努力をしている人達もいるので、本気で格差是正を目指すのであれば単純に金融所得税の税率引き上げをすればいいという結論にはならないと考えます。

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