はじめに

所得倍増を実現するために必要なこと

2021年4~6月の資金循環統計によると、6月末時点で個人(家計部門)が保有する「現金・預金」は前年同期比4.0%増の1,072兆円で、過去最高となりました。この預金は金利がほぼゼロで眠ったまま、いわば「死に金」です。この「死に金」を有効に使って経済を回す、それが日本にとってもっと重要な経済政策です。

東京証券取引所などが発表した2020年度の株式分布状況調査によると、2021年3月末の個人株主数は1年前から308万人増え過去最高の延べ5,981万人になりました。日本証券業協会によると20年度はネット取引の口座数が2019年度比13%増えました。若い世代ほど新規開設に積極的で、20代以下の口座数は4割強増え、30代も2割増となりました。

若い人は長期の株価低迷を経験していません。少額投資非課税制度(NISA)など国の投資促進策の後押しを受けた世代です。
いまこそ株式投資を国民に根付かせ、真剣に「貯蓄」から「投資」への流れを促進するべき時でしょう。それこそが一番確信度の高い成長戦略であり、ほぼ唯一、所得倍増の可能性のある戦略です。

だから「金融所得課税の見直しを当面考えない」のではなく、むしろNISAの拡充などを積極的に考えるべきでしょう。資産運用によって老後2,000万円問題等の将来不安が軽減すれば、消費も増えると思います。給付金を配るのはそうした下地を作ってからでないと効果がありません。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

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