はじめに
インドネシアとフィリピンでも消費回復の兆し
インドネシアでは、他のASEAN各国と同様、新型コロナの感染急拡大を受けて当局が7~8月に厳格な行動制限を講じましたが、石炭など資源の輸出が好調であったため、感染対策による経済全体への悪影響は他国に比べて軽微でした。
11月5日に発表されたインドネシアの7~9月の実質GDP成長率は+3.5%と、4~6月の+7.1%から減速したものの、依然プラス成長を維持しています。
インドネシアはASEAN主要国の中で最も新規感染者が少なく、当局の行動制限緩和を背景にジャカルタ周辺のホテルや観光スポットに客足が戻り始めています。今のところ国内の観光客が中心ですが、新型コロナの感染状況次第で海外観光客の検疫隔離(現状5日間の隔離が必要)もタイの対応に倣う可能性があります。
また、フィリピンでは10月16日からマニラ首都圏で実施している行動制限措置を一段階引き下げ、オフィスや製造関連業種の完全なる活動再開に加え、飲食店や会議の人数制限も緩和しました。同国はアジア有数のキリスト教国で、当局の緩和措置をきっかけにクリスマス期間の消費回復が見込まれます。
ASEAN主要国の10~12月GDPは改善へ
ASEAN主要国の2021年7~9月の実質GDP成長率は、新型コロナの感染対策でいずれも減速・マイナス成長になる見通しですが、感染の沈静化とそれに伴う行動制限緩和によって10~12月に向けて改善が見込まれます。
ただ、ベトナムとインドネシア、フィリピンのワクチン接種完了比率は25%前後と先進国に比べて低水準のため、新規感染や他国からの感染者流入に留意する必要があります。ASENA各国の景気回復が持続するか否か、今後の感染状況と政策の動向に注目したいと思います。
<文:市場情報部 アジア情報課 王曦>