はじめに

実は特定支出控除を使える人は少ない?

項目に従って計算しようとした時、実は 「会社から支給されるお金(モノ)」である場合が多いです。そのため、個人が自腹で払うことが元々少ないため、この制度はそれほど一般的とは言えません。

ところが、2012年度、次いで 2016年度に、受けられる条件の緩和や、該当項目の拡大などの改正がありました。以前より、ずっと使いやすい制度に変わってきているのも事実です。

コロナ禍を経て、社会背景に合わせて税制が見直されていくとするなら、この制度もまた、何らかの変化がある可能性があるので、今のうちから注目をしておくと、いざという時に効果的に使えるかも知れません。

具体的な項目の解説

まず、特定支出控除の対象となる支出項目は、下記の通りです。

(1)通勤にかかった費用

多くの企業が通勤費を支給しているため、個人で負担をすることはそれほど多くはないでしょう。ただし、会社から支給された通勤費を超えて自腹で払った分は、特定支出の対象となります。

例えば、コロナ禍で在宅勤務が始まったことで、昨年は郊外立地の住宅に人気が集まりました。

住宅ロ-ン控除が13年に延長される締め切りも近く、思い切って会社から遠いエリアで、気に入った物件を購入したとします。 ところがコロナが収束に向かうにつれ、会社の方針も変わり、以前のように都心部での出社勤務を命じられ、しかも会社支給の交通費の上限も超えているというような場合などに活用が出来る仕組みです。

(2)出張にかかった費用

一般的には会社から支給されることが多い項目ですが、個人が自腹で支払った分があるなら、特定支出の対象となります。

(3)転勤のため、引っ越しにかかった費用

個人的な引っ越しは対象外ですが、職務のために必要な転居の費用です。ただ一般的には、この費用も会社から支給されることが多いのですが、仮に個人が自腹で支払った分があるなら、特定支出の対象となります。

(4)研修にかかった費用(業務に関するもの)

職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として、研修を受けるために自己負担をした分です。線引きが難しいところですが、個人的な趣味や、転職のための研修は、対象となりにくいでしょう。なぜなら、上記のポイントにあるとおり、「会社が認めた支出」であることが条件になるからです。

(5)資格取得のための費用(会社が認めるもの)

今回の記事で、一番伝えたい部分がこの項目です。研修の費用と同様に、会社が認めた支出であることが条件にはなりますが、法律が改正されたことによって、この項目の範囲が大きく広がりました。

【改正前】 自動車免許、簿記、宅建、英検など
【改正後】 自動車免許、簿記、宅建、英検、弁護士、公認会計士、医師など

会社からの補助(資格取得費)が無く、自腹で上記の資格取得を目指す場合には、大きなメリットになる可能性があります。なぜなら、弁護士や公認会計士、医師といった職種のための資格取得費は、一般的には高額になるケ-スが多いからです。

ただし、「会社が認めた支出」である必要があるので、いかに自腹で資格取得を目指していたとしても、転職を大前提とした支出に対しては、きちんと会社の理解を得た上で進める必要があるでしょう。

(6)帰宅旅費(単身赴任者が帰宅のために払った費用)

単身赴任者が、家族の住む家に帰る場合の旅費です。これも上記同様、会社負担で支給されることが多い費用ですが、個人が自腹で支払った分があるなら、特定支出の対象となります。

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