はじめに

1年間働かないことでどれくらい年金額は減る?

ご相談者が早期にリタイアしたことで、公的年金額も減額して試算しています。

老齢基礎年金は定額で、2020年度は満額78万900円です。これは20歳から60歳までの40年間加入して年金保険料を支払って受給できる金額ですので、1年間加入しなければ約1万9,500円、受取額が減ります。

老齢厚生年金は、収入に応じて年金額は増え、おおむね20歳以上60歳未満の会社員が1年働かず減る年金額は「年収×0.55%」で計算できます(2003年4月以降に厚生年金に加入した場合)。

離職する時点のご相談者の年収を820万円とした場合、50歳以降10年間働かなかったと仮定すると、年金額は6万4,600円×10年=64万6,000円減ることになるわけです。

なお、ご相談者は心配しておられるようですが、公的年金については、「もらえなくなる」ということはありません。ただ、受給開始時期が65歳から後ろ倒しになったり、現在受給している世代よりも受給額が減ったりする可能性はゼロではありません。

ご相談者が60歳前に離職した期間によって、受給金額は減りますが、前述の取り崩し額の範囲内でやりくりできるのであれば、年金がなくても生活できるということになります。ちなみに、年金がない場合、400万円近い赤字が終身続きます。

FPとして、数多くの家計を拝見してきましたが、貯蓄残高がいくらあっても、毎月何も収入が入ってこない生活というのは、精神的につらいものですよ。

いくらあれば安泰かよりも、収入が減った分だけ支出をコントロールできるかが肝心

これらの試算は、まず、高収入ながらも、堅実に貯蓄しておられる結果でしょう。

お二人の手取り年収1,112万円に対して、年間貯蓄額は670万円と貯蓄率は60%以上。支出も、データを拝見する限り、目立った無駄遣いなどは見当たりません。

ただ、購入する物件価格や購入時期、ご相談者の離職の時期、病気やそれ以外の支出などの不確定要素はあります。

とくに、マイホームは、ペアローンをご検討されているようですが、ご相談者の収入の見通しが不安定であれば、パートナー単独で組める額に抑え、頭金を多く充当した方が安心です。そして、購入後も、ご相談者の収入がある間は、繰上げ返済などを利用して残債を減らしていきます。

この辺りのシミュレーションは、金利選択や住宅ローン控除などのメリットとのバランスもありますので、色々と試算されることをお勧めします。

また、パートナーがローンを組み、お二人で返済していく前提であれば、ご相談者には団体信用生命保険はありません。ご相談者に万が一のことがあった場合の死亡保障等を別途上乗せしておく必要があります。

いずれにせよ、住宅購入するかどうかにかかわらず、相談者ご自身がいずれ仕事を辞める可能性が高いのであれば、パートナーの収入だけで、住居費も含めた基本的な生活費はやりくりする習慣をつけておくことです。

そして、旅行や趣味などプラスαの費用は、定額ではなく「年収の〇%」など、定率で設定しておけば、収入の増減に対応できます。

要するに、自分たちには最低限どれだけの生活費がかかるのかを把握しておき、それ以上の部分は柔軟に見直しできるようにしておけば、収入減少にも耐えられる強い家計にできるはずです。

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