はじめに
本当に足りない金額は2,000万円なのか?
では実際、どれだけの人がこの「前提」に当てはまるのでしょうか。
上記資料の実収入「社会保険給付」とは公的年金等にあたります。仮にこの19万1,880円が全額公的年金等であるとします。
かつ夫が20歳~60歳までの40年間サラリーマン(第二号被保険者)としてしっかり年金を納め、妻が専業主婦(第三号被保険者)とし、それぞれ65歳の夫婦だとすると内訳は大まかに以下となります。
夫 :基礎年金 78万円/年 (6.5万円/月)、厚生年金 74.4万円/年 (6.2万円/月)
妻 :基礎年金 78万円/年 (6.5万円/月)
※基礎年金に関しては2021年度の金額を利用
世帯:230万円/年(19.1万円/月)
妻は専業主婦とされているので、基礎年金のみですが、夫は40年間仕事をしています。夫だけの年金を見ると153万円/年(78万円+74.4万円)となります。これは平均標準報酬額※1が30万円前後の場合の年金額にあたります。もちろんこの夫婦と同様の人もいるでしょう。
しかし、40年勤めたのであれば昇給も考えられますし、また地域によっても収入は変わってきます。
そして何より、共働き世帯が考慮されていません。この共働き世帯は年々増え、今では日本の世帯の約7割が共働き世帯となり、専業主婦(主夫)の割合は減ってきているのが現状です。
とすると、この「老後に2,000万円不足する」前提のケースに当てはまる世帯の方が少ない、と考えるのが自然です。
つまりこの世帯は住宅にかかる費用、持ち家だとすればローンは完済できている状況のはずです。35年ローンを組んだとすると、30歳には家を購入していないといけません。また、その年齢であれば子供もいる可能性が高いので、人生の3大資金※2といわれる住宅費と教育費を月30万円以内でやりくりするのはかなり難しいのではないでしょうか。