はじめに
最大の不透明要因はやはり新型コロナ
最後に、2022年のドル円相場の基本シナリオのまとめです。足許の新型コロナウイルス変異型オミクロン株に対する警戒が年初も続く可能性がありますが、マイナスの影響は長期化しないものと思われます。米国の金融引き締め観測を背景にドルが強含み、4~6月期には一旦120円に接近する場面もあるでしょう。
ただし、FRBが6月に利上げを開始して以降は過去の経験則通り、ドル高基調にかげりが見える展開が想定されます。また、年終盤は米国の中間選挙で民主党が大敗し、バイデン政権がレームダック化する可能性も高いとみられます。現在の大統領、議会両院を民主党が占める「トリプルブルー」を維持するのはかなり困難で、年末にかけては政治リスクがドルの重荷となるでしょう。一方で、資源価格の高止まりが円安を支援するため、年末時点で1ドル=114円付近での着地を見込みます。
他方、最大の不透明要因はやはり新型コロナウイルスでしょう。再び感染爆発が起きる可能性もゼロではなく、感染動向次第でFRBの金融政策が影響を受けるのは必至です。また、このような状況下ではエネルギーの需要減少が連想され、資源価格が下落することが濃厚と言えます。米国の金融政策以上に円高リスクを高めることになりそうです。
もっとも、逆にむしろコロナ禍が収束する可能性も相応に高いとみられます。新型コロナウイルスが消滅するのではなく、弱毒化し、特別視されなくなることが想定されるシナリオです。オミクロン株にそのようなポテンシャルがあるのかどうかは分かりませんが、ウイルスの変化とは別に、経口治療薬(飲み薬)の普及で近い将来、従来の風邪やインフルエンザと大差のない疾病という見方が定着してもおかしくはないでしょう。
その場合、世界的に金融政策の正常化が加速することが想定されます。それが円安を支援するケースと、リスク資産売りに拍車をかけ、却って円買いを招くケース、両方のパターンが考えられ、一筋縄ではいかないでしょう。
<文:シニア為替ストラテジスト 石月幸雄>