はじめに

ルーブル建て債券の末路

他にも、インパクト・インベストメント債券のなかには新興国通貨建てで発行されているものが結構含まれています。前述の南ア・ランド、トルコ・リラ以外にも、メキシコ・ペソ、インドネシア・ルピア、ブラジル・レアル、そしてロシア・ルーブルもあります。

ルーブル建てで発行されたインパクト・インベストメント債券は、2019年8月30日が受渡日になっているもので、発行体は世界銀行。利率は年5.66%で、償還までの期間は3年でした。

2019年8月30日時点の為替レートは、1ルーブル=1.7円前後でしたが、ウクライナ侵攻の影響で、2022年3月時点では1ルーブル=1.2円前後まで急落しています。30%ほど対円で値下がりしているので、仮にルーブルがこの水準を維持できたとしても、償還時には元本割れになるでしょうし、瞬間につけた1ルーブル=0.8円前後の最安値水準にまでさらに下がったら、為替だけで大損害が生じます。

ちなみに発行体である世界銀行は、債券格付けが「AAA」という最上位格付けを取得しています。この格付を見たら、まさか自分が投資した世界銀行債が大幅な元本割れで償還されるなどとは、夢にも思わないでしょう。

でも、それが現実に起ってしまうのが、新興国通貨投資の怖いところなのです。

債券というと、発行体によって元利金の支払いが保証されている、比較的安全性の高い投資対象というイメージがあります。しかも発行体が、世界銀行のように高い信用力を有していればなおさらです。それでも、このような事態が起こってしまうのです。

確かに高い利率は魅力ですが、その源泉が何なのかということにはくれぐれも留意して下さい。特に新興国通貨で発行していることが高金利の源泉だとしたら、為替の値動きで高いリスクを背負う恐れが十分にあるのです。

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