はじめに

宇宙エレベーターの仕組み

人類の夢の実現だけでなく、いつかエネルギー資源の限界を迎えるであろう地球から一歩踏み出すため、多くの研究者が宇宙エレベーターの研究をおこなってきました。にもかかわらず、長い間ガンダムの世界から抜け出せなかったのは、なぜなのでしょうか。

その答えは「宇宙エレベーター実現のために必要不可欠なものを作ることができなかったから」です。いったいそれは何なのか。それを知るため、まずは宇宙エレベーターの仕組みを確認してみましょう。

まず、気象観測用衛星「ひまわり」をはじめとする人工衛星は、赤道上空約3万6000㎞にあり、地球の自転と同じスピードで回っています。そのため、地球からは同じ位置に静止しているように見えるので「静止衛星」とよばれています。

例えば車で走行中、隣の車線に同じスピードで走っている車がいたら、その車は止まっているように見えますよね。それと同じです。

では、静止衛星が何かわかったところで、一緒に宇宙エレベーターを作ってみましょう!想像力を働かせて、ついてきてくださいね。まず、静止衛星から地球に向けてケーブルを延ばしていきます。

地球側だけにケーブルを延ばすとバランスを崩すため、地球とは反対側(宇宙側)にも延ばしていき、全体のバランスをうまく調整しながらおこないます。

やがて、ケーブルは地球の表面に到達し、地上と宇宙を結ぶ一本のロープのような状態になります。このケーブルにクライマーとよばれる昇降機を取り付けると、宇宙エレベーターが完成です!

では、大林組が発表している完成予想図を文章で表現してみるので、少しの間、想像力を全開でお願いします!ケーブルの地球側の末端(すなわち地上)にはターミナル。そして宇宙側の末端にはバランスを取るためのおもり(カウンター)が付いていて、ターミナルからカウンターまで、ケーブルがピンと張った状態です。

そして、ターミナルとカウンターのあいだには、地球に近いほうから「低軌道ステーション」「静止軌道ステーション」「火星ステーション」「高軌道ステーション」の4つのステーションが設けられており、ステーションの間を、通常のエレベーターのようにクライマーが昇降しています。

みなさんの頭の中に完成予想図が見えましたか?(「おい、坂田! 説明が下手くそで想像できなかったぞ?」という方は、申し訳ございません。大林組のHPをご覧ください)

この完成予想図。私は何度見てもワクワクします。映画などではなく、現実にそれを人間が作ろうとしているのですから。

宇宙エレベーター実現のために必要不可欠なもの

宇宙エレベーターを全体で見ると、ステーションやカウンターをつけた状態の約1万㎞にもおよぶ長大なケーブルがピンと張った状態を保って、地球と同じ速さで回っていることになります。この状態を保つことができるのは、ケーブルに2つの力が働いているためです。

1つはみなさんもご存知の「地球の重力」すなわち「万有引力」です。これにより、地球側に引っ張られる力が働いています。重力は重いものほど強くなります。

もう1つは、宇宙側に引っ張られる力「遠心力」です。ハンマー投げを思い浮かべてみましょう。おもりのついた鎖を振り回すと、おもりのほうへ体が引っ張られそうになりますね。これが遠心力です。遠心力も重いものほど強くなります。宇宙側の先端につけたカウンターは、遠心力を十分なものにし、万有引力とのバランスを取るためだったのです。地球側に向けてはたらく「万有引力」と宇宙側に向けてはたらく「遠心力」。この2つの力によって、宇宙エレベーターのケーブルはピンと張った状態を保つことができるのです。

問題は、その2つの力の「強さ」です。宇宙エレベーターは、先端のカウンターだけでも約37t。ステーションやケーブル自体の重さもあるため、総重量は100tにもおよぶといわれています。そのため、万有引力も遠心力も非常に強くなり、ケーブルはその強い2つの力に引っ張られ続けるのです。

丈夫な素材といわれている鋼鉄やケブラー繊維でさえ、この強い力にはかないません。そうです。宇宙エレベーターをガンダムの世界から現実世界に引きずり出すには、この強い力に耐えられる素材が必要だったのです! 長い間、人類はその素材を手に入れることができませんでした。しかし、1991年。ついに飯島澄男博士によって「カーボンナノチューブ」が発見されたのです。

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