はじめに

ロシアによるウクライナへの侵攻が続くなか、戦争による環境汚染の問題が活発に議論されています。これを受けてか、暗号資産業界でもマイニング(※)による環境汚染の議論が再び沸き起こっています。ビットコインのマイニングは大量の電力を消費するため、環境負荷が大きいと聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
※コンピュータを使って取引の記録作業に貢献し、その対価として暗号資産を得る行為

例えば、欧州では暗号資産関連の規制法案の中で、環境問題への懸念から、ビットコインをはじめとする「プルーフ・オブ・ワーク(以下、PoW)」関連の暗号資産を禁止することを検討しています。また、米国の環境団体はビットコインはPoWから「プルーフ・オブ・ステーク(以下、PoS)」へ移行すべきだとの広告キャンペーンを実施しています。

このように暗号資産のマイニングや、それによる環境問題を議論する際にはPoWやPoSといった言葉が出てきます。これらは横文字でわかりづらい印象を受けますが、暗号資産の重要な仕組みの一部を表しています。今回はPoWとPoSとは一体何なのか、それぞれの違いなどについて解説します。


ビットコインで採用されるPoW

ビットコインはPoWを採用する代表的な暗号資産です。「Proof of Work」とは日本語で「仕事の証明」を意味しますが、ネットワークの参加者間で合意を形成する仕組みのことで、具体的には膨大なコンピュータ計算によってブロックチェーン上の取引を検証する仕組みを指しています。つまり、計算資源を多く持つマイナーほど承認の権限が強くなります。

PoWのマイニングでは、コンピュータで複雑な計算処理を行うための電力がかかります。かつては個人のコンピュータでもマイニングを十分に行える環境でしたが、最近では企業も参入し、専用の大型マシンが製造される中で、マイニングにかかるコストが大きくなっています。マシンを稼働する電力だけではなく、それを冷却する設備や、それらを置く広いスペースも必要になります。

こうした理由から、大量のエネルギーを消費するPoWのマイニングは環境負荷が大きいと言われていますが、具体的にどの程度の電力を年間で消費しているのでしょうか。ビットコインといくつかの項目を比べてみました。

図表1を見ると、ビットコインのマイニングにかかる電力消費は、データセンターやデータ伝送といったインターネット上のデータのやり取りに比べれば少ないものの、ノルウェーやウクライナといった中規模の国に匹敵していることがわかります。しかし、金鉱採掘や銅生産と比べると大きな差はなく、資源を掘り起こすという意味合いでは、ビットコインの電力消費の大小を判断することは難しいとも言えます。

PoWのマイニングは、計算資源をそろえるハードルが高いことから、分散的かつ安全なネットワークを維持する上では役立っているとの見方もあります。過半数のリソースを握ったマイナーによって、ネットワークが操作されてしまうリスク(以下、51%攻撃)がありますが、ビットコインの場合には巨大な計算資源が必要になり、その計算資源は各地で分散的に所有されていることから、51%攻撃を仕掛けることが極めて難しくなっています。

ただし、時価総額の小さい暗号資産の場合には、PoWのマイニングで51%攻撃を受けた事例もあるため、マイナーな暗号資産に投資する際には注意が必要です。

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