はじめに

(2)公平であること

公的年金で大切なことの2つ目、それは制度が公平であることです。(1)でお話ししたように誰もが参加することが大切なのであれば、それは公平でなければならないということです。この場合に「公平」というのは2つの意味があります。

ひとつ目は、負担と給付のバランスです。すなわち保険料を多く負担すれば年金の給付も多くなるべきだということです。厚生年金の場合、「報酬比例部分」がありますから、一生懸命働いて給料が上がれば、保険料の負担も増える代わりに将来の年金支給額も増えます。

また、1人あたりの収入が同じであるなら、どんなパターンの世帯であっても1人あたりの年金給付額は同じになるということです。言い換えれば専業主婦になるのか、それとも共働きになるのか、あるいは生涯独身で過ごすのかは、人それぞれのライフスタイルです。どんなライフスタイルになっても収入が同じである限り年金給付額は変わらないということは今後益々多様性が進む社会においては極めて重要なことです。そして現在の年金制度はそのような仕組みになっているのです。

もちろん、自営業やフリーランスの場合、厚生年金に加入できませんから狭い意味での公的年金制度だけで見ると自営業の給付額が少ないことは確かです。しかしながらそもそも自営業には定年がありませんから一般的には働ける期間はサラリーマンよりは長いですし、かつサラリーマンが厚生年金保険料を払い込む金額と同じぐらいの金額を国民年金基金やiDeCoに回せば、非課税扱いで積立ができます。

加えて、掛金全額が所得控除になりますから、制度としては決してサラリーマンだけが優遇されているわけではありません。むしろサラリーマンには利用できない有利な制度がある分、自営業の人が頑張って稼げばサラリーマンをはるかに上回る老後資金を手にすることも可能です。

ふたつ目の「公平」は、世代間の負担が公平であることです。簡単に言えば現役世代と受給世代で痛みを分かち合うということです。

現在の高齢世代は若い頃は親の扶養と保険料の納付という二重の負担を負ってきた部分もありますので、必ずしも今の高齢者が特別に優遇されているというわけではありません。さりとて今後少子高齢化が進んで行く2040~2050年ぐらいまでは放っておくと現役の負担のみが増大しかねません。だからこそ2004年の改革で保険料も一定期間は引き上げる代わりに受給者にも「マクロ経済スライド」で少し我慢してもらおうという仕組みを作ったのです。

単純に保険料の負担だけに限って言えば「世代間格差」はありますが、トータルに考えると「世代間不公平」ということが生じないように設計されているのです。

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