はじめに

予想通りの利上げ、市場はどう動いた?

5月FOMCでは、事前の市場予想通り通常の倍の0.5%の利上げと、6月から保有資産の圧縮開始が決定されました。

「インフレがあまりにも高い」ということや、労働市場がきわめてタイトであることがパウエル議長の発言で意識されるなかで、急ピッチの金融引き締めながらも予想よりはハト派的な内容だったといえます。

今月はフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.5%引き上げることを全会一致で決定、これはすでに市場で織り込まれていました。市場の関心事は6月以降の利上げペースで、6月に0.75%の利上げがあるのかが注目されていましたが、パウエル議長は「委員会は6-7月も0.5%での利上げを継続し、0.75%の利上げは積極的には検討していない」と、慎重な姿勢を示しました。

また、保有資産に関しては、6月から月475億ドル縮小させ、3カ月かけて9月から950億ドル縮小とバランスシートの縮小が決定されています。バランスシートとは「貸借対照表」のことで、「資産」と「負債・純資産」の一覧で財務の状態を表すものです。FRBのバランスシートは、2008年の「リーマンショック」の際に景気後退への対応のため、市中にお金を回すことを目的とした債権購入などにより急激に膨らみました。今回、縮小を開始するというのは、市中からお金を引き戻す、つまり利上げと同様の効果があります。

早期利上げへの警戒感やインフレ・地政学リスクにまつわる世界景気への先行き不透明感から、株式市場は軟調で、ダウ平均は前週まで5週続落となっていました。FOMCの結果とパウエル議長の発言を受け、5月4日の米市場では株高の流れとなり、同日の米主要3指数は急上昇しましたが、翌5日はおよそ2年ぶりの大幅な下げとなり、前日の上昇分を打ち消しました。金融引き締めによる景気悪化のリスクが意識され、ボラティリティの高い状況となっているようです。

今週の日経平均の値動き

日本市場はゴールデンウィークで月曜日と金曜日しか市場が開いていませんでした。週末5月6日(金)の日経平均株価は2万7003円56銭。前週末4月28日(木)の終値は2万6847円90銭でしたので、週間では155円66銭の上昇となりました。

また今週は岸田首相がロンドンで「Invest In Kishida(岸田に投資を)」と日本への投資を呼びかけ、「資産所得倍増プラン」を発表。日本の個人資産2000兆円を資産運用に誘導する新たな仕組みをつくるとの方針も報じられました。

連休明けの5月9日週は、FOMCや雇用統計の結果を受けて、日本市場がどう動くのかに注目です。また5月11日(水)にはインフレの動向を知る上で重要な経済指標であるCPI(消費者物価指数)の発表もあるので、こちらも注視しておきましょう。

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