はじめに

目下の課題は「貯蓄から消費へ」

ここでは、株式市場でも関心が高く今回も話題になった、「貯蓄から投資へ」のメッセージについて考えたいと思います。「資産所得倍増プラン」は、昨年秋に話題になった「令和版所得倍増」とはまた異なる表現で再度提示されていることからも、実現への強い意欲がうかがえます。一方で、山際内閣府特命担当大臣の記者会見でも触れていましたが、これは相当息の長い、時間のかかる取り組みといえるでしょう。

個人金融資産が2,000兆円を超える日本において、「貯蓄から投資へ」は長らく叫ばれてきました。一方で、個人金融資産として挙げられる額が大きく減少していないことからもわかるように、この取り組みはこれまで大きな進展を見せていないのが現状と言えます。

具体的な施策に少額投資非課税制度「NISA」が挙げられていますが、こちらもコロナ禍で活用が増えたのは長期投資を前提とする「つみたてNISA」であります。「貯蓄から投資へ」に寄与していることは間違いないですが、成果が出るまで時間がかかることには変わりありません。

「つみたてNISA」口座の利用は着実に進む
(金融庁のデータを基に筆者作成)

現実に目を向けると、直近の経済指標からもわかるように、目下の課題は消費喚起にあるのではないでしょうか。

先日発表された1〜3月期の日本のGDPは前期比1.0%減と、当初の予想よりは下げ幅は小さくなったものの、2期ぶりのマイナス成長となっています。内訳をみると、GDPの約半分を占める個人消費が横ばいであり、成長を牽引できていないことがわかります。

その背景として、この約2年で蓄積した「コロナ貯蓄」が3月末時点で約55兆円にのぼっていることが挙げられます。貯蓄から投資はおろか、消費にさえ回っていないことがデータからわかります。

これらを踏まえると、足元では中長期的な目線よりも、コロナ禍からの再起に向けて、短期的に消費が上向くような施策の議論が活発になることが重要でしょう。いま求められているメッセージとしては、むしろ「貯蓄から消費へ」ではないかと筆者は考えます。

GW中の行楽地の人出が活発であったことから、これからの自然な消費回復にも期待できますが、一層回復が加速するような政策についての打ち出しを政府には期待したいところです。

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