はじめに
相場変動の「理由」を知る大切さ
私にとって印象的だったのは、「何が起こったのか、全く分からなかった」という言葉でした。要するに、相場が上昇して利益が出ていたこと、そしてその後相場の急落で利益が消滅したこと、それぞれに「理由」はあったわけですが、前者、つまり利益が出ていたことの理由は気にせず、利益が吹き飛んだことで、初めてその理由が気になったということではないでしょうか。
これは、為替相場において結構ありがちなことです。為替相場でも、米ドル/円などは朝昼晩のニュースでも取り上げるくらいですから、とくにFXを取引していない人でも、今いくらぐらいかは大体わかるでしょう。そして、上がった理由、下がった理由についても、良くも悪くも情報は豊富です。ところが米ドル/円以外は、「今いくらぐらいですか?」と聞かれても、全く見当もつかないということが少なくないのではないでしょうか。
この失敗例では「クロス円」を取引していました。クロス円とは、対円での米ドル以外の外貨取引のことです。一方で、対米ドルでの取引は、「ドルストレート」と呼ばれます。例えば、米ドル/円とユーロ/米ドルは「ドルストレート」。この2つの「ドルストレート」を掛け合わせて計算したもの、つまり「クロス」したのがユーロ/円というクロス円になります。同じ考え方で、代表的なクロス円としては、豪ドル/円や英ポンド/円、高金利通貨のクロス円としては、メキシコペソ/円や南アフリカランド/円などがあります。
さて、話を戻しましょう。クロス円の場合、米ドル/円と比べると、「上がった理由」「下がった理由」についての情報が少ない。「少ない」とは言いましたが、ないわけではなく、その気になって検索などして探せば、情報を集めることはそれほど難しくはありません。
よく分からないけど相場が上昇し、安定的、継続的に利益が出ていると気にならない。ただ、運悪く「ショック相場」に巻き込まれ、利益が吹き飛んでしまう、それどころか大きな損失を出してしまうといった「コツコツドカン!」に見舞われてしった後の対応は、「その気」になる・ならないで分かれるでしょう。
ある程度であっても「ショック相場」が起こり、損失を出した理由が分かれば、反省した上でリベンジに挑む可能性はあるでしょう。ただ損を出した理由が分からなければ、何を反省したらよいかもわからず、ただただ「やっぱりFXって怖い」となって、取引から撤退する可能性も高いでしょう。
「コツコツドカン!」の一つの教訓は、自分が行っている取引では、「ドカン!」と損を出す前、利益が出ている時から、利益が出ている理由、損を出すかもしれない理由などをある程度は知っておく必要があるということです。
それはどんな投資においても当たり前のことなのですが、FXの場合、米ドル/円以外は「その気」になってしっかり情報を集めなければいけないので、この「コツコツドカン!」の罠にはまりやすいと言えそうです。