はじめに

よくFX取引はリスクが高いといった話を聞きます。しかし、FX取引が対象とする為替相場は、株式相場などと比べても、基本的には値動きが小さいので、むしろ相場の変動リスクは小さいため、「ロー・リスク」と言えます。それでは、なぜ「FXはハイ・リスク」とされるのか、その理由について説明したいと思います。


為替相場は小動き

まずは、図表をご覧ください。これは、2018年と2019年の2年間について、米ドル/円とNYダウの年間最大変動率を比較したものです。計算方法は、高値を安値で割って求めていますが、2年とも米ドル/円のそれは、NYダウを大きく下回っていたことがわかるでしょう。

このように見ると、FX取引が対象とする為替相場は、実は値動きが少ない、要するに小動きなので、「ハイ・リスク」どころか、本来的にはリスクは小さい投資対象なのです。しかし、幸か不幸か、FXが誕生した直後、為替相場は小動きとは真逆の「嵐の船出」のようになったのです。

FXのスタートは「史上最悪の相場」

「FXは1998年の外為法改正を受けて始まった」というのは、一般的に説明されているものです。より細かく言えば、じつは実質的スタート、つまりFXのビジネスとしての本格的に始まったのは、金融機関が本格的にFXの販売を開始した1998年10月でした。ただし、その1998年10月こそ、なんと「FX史上最悪の相場」が起こったタイミングだったのです。

FXが実質的にスタートした1998年10月、米ドル/円は、前半のたった3日間で1米ドル=135円程度から110円割れ寸前まで、25円程度もの暴落となったのです。これは丁度、前回もご紹介したFXの歴史を代表する米ドル大暴落だったのです。

こういった中で、この「FXの誕生月」、1998年10月の米ドル/円の変動率(<高値-安値>/終値)は21%にも達しました。まだFXが始まったばかりで、取引している人も限られたことだったのが、不幸中の幸いだったかもしれません。これがもっと取引が盛り上がった中で起こったら、一気に「FXは怖い」となってしまったのではないでしょうか。ただ、このように米ドル/円の月間変動率が2ケタとなったのは、その後しばらくなかったのです。

1998年10月以来の、米ドル/円の月間変動率2ケタとなったのが、ちょうど10年後、2008年のいわゆる「リーマン・ショック」が起こったタイミングでした。2008年10月、この時の米ドル/円変動率は、上述の1998年10月のそれには及ばなかったものの、それでも15%となり、まさに「FX誕生月」以来の大変動となったのでした。

これは、FXにとっては、とても重要ことでした。FXは、スタート直後を除くと、その後は小幅な変動が続いてきたのでした。基本的には大きな値動きとならないと、大きな利益の獲得も難しいことになります。

たとえば、1米ドル=100円で買った米ドルが、200円まで上がったら、どこで売る(利益確定する)かはともかく、大きな利益を稼げる機会があります。しかし、1米ドル=100円で買った米ドルが、110円までしか上がらなかったら、どこで売る(利益確定する)としても、利益は限られたものにしかならない。

以上のように、利益(リターン)の大前提は、値幅(ボラティリティー)となります。具体的には、1米ドル=100円の米ドルが200円まで上がるか、それとも110円までしか上がらないか。その上で、後者の場合でも利益を大きくするためには、基本的には投資金額を大きくする必要があります。

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