はじめに

年金額はなぜ2年連続減ったのか

年金額は毎年1回、4月に見直されて増減します。そして、6月支給分(4月・5月の2か月分)から見直し後の金額で支給されるしくみです。

年金額の見直しの基本ルールは、

・67歳まで(新規裁定者)…賃金の変動率に合わせて見直す
・68歳以降(既裁定者)…物価の変動率に合わせて見直す

となっています。

しかし、このルールには例外があります。それは、「物価の変動率が賃金の変動率より高い場合は、賃金の変動率に合わせて年金額を見直す」というものです。この例外ルールは、2021年4月より適用されています。

年金額の見直しルールの例外

日本年金機構のウェブサイト
日本年金機構のウェブサイトより 引用

物価よりも賃金が大きく上昇した場合は基本どおりなのですが、物価ほど賃金が上昇しなかった場合は、上の図のように、賃金に合わせて年金額が見直されるのです。

なお、賃金の増減率には、「名目手取り賃金変動率」といって、2年度前から4年度前の3年間の平均の実質賃金変動率に、「前年の消費者物価指数の変動率」や「可処分所得割合変化率」を組み合わせたものが用いられます。賃金だけでなく、物価も加味して決められるのです。

2021年度と2022年度の名目手取り賃金変動率と物価変動率は次のとおりでした。

2021年度
名目手取り賃金変動率:−0.1%
物価変動率:0.0%
→年金額は前年より0.1%引き下げ

2022年度
名目手取り賃金変動率:−0.4%
物価変動率:−0.2%
→年金額は前年より0.4%引き下げ

このように、2021年度・2022年度はともに物価変動率>名目手取り賃金変動率だったため、年金額が名目手取り賃金変動率に合わせて引き下げられた、というわけです。

目下、ありとあらゆるものがインフレによって値上がりしています。しかし、今後も物価より賃金が上昇しない限りは、物価の上昇ほどに年金額は増えないことになります。無駄遣いしていなくても生活コストがかさむなかでの年金額の減額は、年金受給世代の生活をますます圧迫していきます。

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