はじめに
以上を踏まえた上で、図表1と2についてもう一度見てみましょう。2020年3月に新型コロナ・ウィルス感染問題が急浮上すると、前代未聞の事態に世界経済への悪影響を懸念し、まずは世界的な株価の大暴落、「コロナ・ショック」が起こりました。ただこの危機を乗り切るべく、「世界一の経済大国」である米国を中心に空前規模の金融緩和策が行われると、株価も景気も回復に向かい出しました。
図表1の2021年に入ってからの米ドル/円は、そんな「コロナ後」の景気回復がメイン・テーマになっていたので、長期金利、つまり日米の10年債利回り差を目安とした推移が続いたということでしょう。
しかし、景気回復が進むと、次は「コロナ・ショック」対応の金融緩和の見直しといった金融政策がテーマに変わってくる。すると、為替相場の変動する手掛かりも、それまでの10年債利回りから、金融政策を反映する2年債利回りに変わり出したということではないでしょうか。
今回の内容、少し難しかったでしょうか。難しく思わず、以下の点だけを理解してください。為替の先読みとは、金利(米ドル/円のような通貨ペアで考える場合は2通貨の「金利差」)を予測することが基本だということです。
たださすがに一つの金利だけで全て説明できるわけではなく、テーマによって影響する金利は変わり、そしてもちろん、例外的に金利で説明できない局面もありますが、その場合の多くは株価との関係で説明が可能となります。
以上を踏まえた上で、最後に米ドルの行方を考えるために、目安となる主なイベントについて確認しましょう。
<米ドル関連の重要イベント>
1)米国の金利を決める会合はFOMC(米連邦公開市場委員会)で約1カ月半毎に開催
2)米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)の使命は、物価と雇用の番人
3)雇用統計は、原則的に毎月第一金曜日に発表
4)物価指標はCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)、PCEコアデフレーター等
米ドルの特徴について説明するところ、それから派生し、為替相場全体の変動の仕組みや、それを踏まえた上での為替相場を予測する上での「本質」といったような内容になってきました。
ただ私が伝えたかったのは、米ドルなどの為替相場を予測するのは、かなり単純化できる可能性があるのではないか、ということです。それが伝わり、少しでも気が楽になって先に進んでいただけたら幸いです。