はじめに
FIRE後の税金はどうなる?
さて、給与で収入があった人が、ある時突然「FIREを達成できそうなので、退職します」と言うと、その人の税金はどうなるでしょうか? 考えもせずに突然会社を退職すると、「え、こんな税金の支払いがあるなんて知らなかった……」と、嘆かわしいことになるかもしれませんよ。
この連載でも何度かお伝えしてきましたが、給与の収入に対してかかっている税金には、「所得税」と「住民税」があります。
このうち、所得税は1月分から11月分まで、給与の支給金額から毎月概算で計算して、ちょっと多めに「源泉徴収税額」という所得税が引かれて支給されています。そして、そのざっくり多めに引かれている所得税を、1年の最後でキッチリ計算して、精算してくれるのが「年末調整」です。そのため、もし12月支給分の給与が退職前、最後の受け取りだとしたら、会社が所得税の精算まで終わらせてくれているので、自分では何も手続きがいりません。
もし、退職前の給与は1月や2月の受け取りがあって、それから辞めてしまうと、1月支給分や2月支給分は「ざっくりと多めに所得税を引いてある」ので、ざっくりの所得税を自分で「確定申告」して所得税の還付をゲットしましょう。退職するときに、職場から「源泉徴収票(年末調整がまだされていないもの)」を受け取って、確定申告の時までちゃんと持っておいてください。
そして、住民税は、退職するタイミングによって、その取り扱いが違います。住民税は忘れた頃にやってきます。1月から12月分の給与の金額で計算した住民税の通知が翌年の5月ごろに会社に届き、6月からさらにその翌年の5月までの間で12で割った金額を給与から差し引きしていくのがルールになります。
そのため、1月から4月が退職日の場合は、前々年の給与から計算された住民税をまだ納めている途中になります。しかも残りあと数ヵ月! そのため、「5月納付分までの残っている住民税は、最後のお給料から残っている全部をドーン! と、引いておきますね」と言われてしまいます。手取りが嘆かわしいほど減ります。
しかし、退職日が5月なら、普通に5月支給分給与からの天引きで1年の最後の税額を納めて終わりになります。
退職日が6月から12月なら、前々年の給与から計算された住民税をまだ納めている途中になります。「5月納付分までの残っている住民税はどうしますか?」と会社から聞かれ、次の2つから納付方法を選ぶことができます。なお、引いた後の手取り金額がほとんどなくなってしまうこともあるので注意してくださいね。
1.自分で納付書を使って納めます
2.最後のお給料から残っている住民税もドーン! と、ひいておきます
そして、退職後のこれら税金は投資に関するものにかかってくるので、「配当所得」と「株式の譲渡所得」(不動産の家賃収入がある方は「不動産所得」も)という、もうけにかかるものになります。
FIRE後の収入源への税金に差
FIREで得ている投資の運用益のうち、NISA口座で保有しているものについては、税金がかからないことになるので、いくらもうけていても、非課税です。
「一般」や「特定」という口座で持っている投資商品の場合、「源泉徴収あり」か「源泉徴収なし」を選んでいるはずです。「源泉徴収あり」は、投資で儲けた分については、所得税を自動で計算して事前に引いておいて、残りをお支払いするよ、という口座の設定です。
そして、特定という口座を持っている方は、この特定の枠で買った株などの商品については、1本で合算して計算しておいて2割ほどの税金を事前に引いておいてくれる、という口座です。この口座は、いくつ投資商品を持っていても、1つの銘柄を持っているかのような税金の扱いをされます。
いずれにしても、「源泉徴収あり」にしておくことで、自分で一切手続きをせず、放っておいても申告不要で収入がどんどん入るということですね、なんて……喜ばしい!
会社員の時代は、この特定口座や一般口座で持っている投資商品について、確定申告などはせずに放置していたのではないかと思います。だって、申告しなくてイイんですもの。でも、FIREし始めて、給与収入がなくなった場合、はたして本当に申告しなくて良いのでしょうか?
正解は、「申告しなくて良い!」けど、「申告した方が良い!」です。「え〜、どういうこと?」と思いましたよね、詳しく解説します。